潜在自然植生


日本の都市に見られる公園の多くは、西洋の公園のモダンな佇まいを再現した芝生公園が多い。背の高い樹木の下に丈の低い草地が広がる景観は、訪れる人に潤いと安らぎを与えてくれる。

ところがこうした景観は、生態学的にいうと人類によって破壊されてしまった結果の「荒れ野景観」に当たるのだそうだ。長期間にわたり、ヒツジ、ヤギ、牛などの大型獣を放牧した結果、森林の低層植物が食い尽くされて、「本当の森」では無くなってしまった結果だという。

長年、盲目的にヨーロッパの風景に憧れていた私にはショックな話である。新宿御苑のような広々として安らぐ景観が、実は人類の営みによってもたらされた人口的自然にすぎず、むしろ自然破壊の結果だとは。

「本来の森」とは、背の高い樹木の下に、一見すると邪魔者に見えるような下草や低木などが茂る森である。日本でいえば、各地に残る「鎮守の森」のような森のこと。そういう意味で、明治神宮の森は、80年かけて理想的な自然の森となるように設計された、完全なる都市公園林。

これを「潜在自然植生」という。人間の活動を完全にストップした時に、その土地の自然環境が究極的に支えうる状態。明治神宮の森はその状態に向かって進んでいる。

ヨーロッパや中国の森林、アマゾンの熱帯雨林の再生プロジェクトを手がける、宮脇昭先生が、数十年間取り組んだ研究から導き出された理論。私はもっと早くに勉強すべきだったと後悔しております。


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