幸運の逆ギレ

若き日のムツゴロウ先生

朝日新聞の夕刊で読んだ愉快なお話。(☆1)

若きムツゴロウ(畑正憲)先生は、就職した会社を7年で退職する。自然科学を追求して映像化する仕事を、一生懸命やっていたのです。しかしなぜか「勤務態度に問題がある」とクビになったのだそうです。のちのムツゴロウ先生の、破天荒な活動ぶりを知る私たちとしては「さもありなん」という気もしますが、お気の毒です。

その後、五反田の職業安定所をたずねる。そこで、受付の男の人に書類を書き直すよう怒鳴られた。そこでムツゴロウ先生は、キレてしまった。何でこいつにそんな口をきかれなければならないのか、頭にきたのだそうです。書類を破って、男の人に投げつけて飛び出しました。

ところが、この「逆ギレ」が幸運を呼んだのです。

「逆ギレ」してしまったことを反省しながらたどり着いた有楽町。そこで、かつてお世話になっていた、電通の部長に声をかけられる。それから、医学関係のキャッチコピーの仕事などを山ほどいただくようになったのだそうです。

もしも、五反田の職安で「逆ギレ」せずに、おとなしく仕事をもらっていたならば、ムツゴロウ先生の運命は変わっていたのかもしれません。その後の「動物王国」を作る事も無く、どこか学習塾の理科の先生でもしていたのかも。

偉大な人生を送った方に限って、こういう話はよく聞きますね。スキー連盟から見放されてしまって、プロスキーヤーの道を歩み始めたという、三浦雄一郎さん。NHK交響楽団との不仲がきっかけで、海を渡った小沢征爾さん。トラブルや問題がきっかけとなって、人生が良い方へと軌道修正される話。きっと、運命の女神の仕業なのでしょう。トラブっている間は、本人にとってはつらいだけかもしれませんが、それはいずれやってくる「転機」への序章なのですね。

人生の途中で、いろんな苦難や、予定外のトラブルがあっても、こんな風に考えられたらいいですね。失敗続きの就職活動だとしても、それはみんな、次にやってくる「転機」への準備なんだからって。いくつコケても最後にゴールにたどりつけば、それでいいんだ。

だからって、無駄にケンカや逆ギレはしないでくださいね。ムツゴロウ先生におきた「幸運の逆ギレ」事件は、たまたまムツゴロウ先生の人生に起こった事。真似はしないようにしよう。

大学3年生の就職戦線がはじまりました。もうすぐ年を越えて、これから長期戦となるかもしれません。就活生のみなさんが疲れたり、ガックリくること無く、元気に人生の扉を探しあててくれることを祈っています。

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☆1:朝日新聞 2011年11月29日夕刊掲載 [ 人生の贈り物 作家 畑正憲 ②「オタマジャクシに没頭、ツキ呼んだ」]

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