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リアル落語家

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さびしい。

立川談四楼師匠の連載がとつぜん終わっちゃった。日経新聞の月曜夕刊の「プロムナード」のシリーズ。このところ毎回楽しみにしていたのに。

12月24日のクリスマスイブに掲載されていた「サンタクロース現る」の回を、いつものようにニタニタしながら読んでいて、最後まできてびっくり。文章のおしまいでひとこと。「私の最終回です。いずれまたどこかで」って。

さすがは落語家。話は最後に軽くまとめまるんですね。「おあとがよろしいようで」とか言ってさっと消えてしまう。まあ、せっかくの「落ち」のインパクトを消さないようにという配慮。目立たないように消えさせていただきます、という謙虚さ。これが噺家さんの身上なのでしょう。

ところで、この回の「プロムナード」には何が書いてあったのか?それは、ネタばれになっちゃうからそのまま書いてはいけないよね。でもちょっとだけ書かせてください。「サンタクロース現る」の回のサンタクロースとは、ある熱烈な落語ファンのことなのです。豪華なポチ袋を置いて姿を消してしまった、いまどき珍しい粋なお客様のこと。

今でも落語には熱烈なファンが多いのだ。談四楼師匠によれば、地方にいけばいくほど、公演を心から楽しみにしている方々が多いそうだ。そして首都圏でもなんと一日平均で20カ所で落語会が催されているとのこと。(4軒の寄席をのぞいて)こうした会場には、「落語のうるさがた」を自認するファンもやってくる。

こうした、うるさいお客を前に、芸を披露する落語というものは、演じる者にとっては本当に「おそろしい」ものらしい。亡くなった昭和の名人、古今亭志ん生師匠も桂枝雀師匠も、高座に出るときには相当プレッシャーを感じていらしたようだ。しかしそのプレッシャーを跳ね返すように、芸のパワーが高座に炸裂する。それが名演となるのだって。噺家というのは、本当に大変な仕事なのだと思う。毎日毎日はまさに、お客の目に芸がさらされる、本番と修行の連続。

人気漫才グループ爆笑問題。最近はテレビなども忙しく生の舞台に出ることが少なくなり、ホール公演も映像中継でやってしまう。しかしプロデューサーで社長の、太田光代(太田光さんの奥様)さんは、爆笑問題の芸の「きっさき」が鈍らないようにと、年に一度は必ず生のステージを組むそうだ。生のお客さんの前で芸を披露するということは、そのときそのときの感性を信じて、リア…

追いつめてはいけない

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孫子の第八は「九変篇」だ。

以前このブログでも紹介した「火攻篇」よりもだいぶ前に位置している。攻撃に際して避けるべき九つの変法と、利益を守るべき五つの変則があると述べている。そのうちの九つの変法というのを、以下簡単に紹介しますね。

1:高地に陣取った敵を攻撃してはならぬ。敵は勢いを得て味方は労する。
2:丘を背にした敵を正面攻撃してはならぬ。
3:わざと逃げる敵を深追いしてはならぬ。敵になにか計略がある。
4:精鋭な敵を、まともに攻めてはならぬ。
5:おとりの敵兵にとびついてはならぬ。
6:帰ろうとする敵兵にとびついてはならぬ。
7:敵を包囲するときには、完全包囲してはならぬ。
8:追いつめられた敵にうかうかと近づくな。
9:本国から隔絶した敵地に長くとどまるな。

どれも、兵を率いる将の心得として重要なこと。この「九変篇」に述べられている法のうち、特に注目をひくのが、7番目の、敵を包囲するときには完全包囲してはならぬ、という教えです。原文では「囲師勿周 ( 囲地は周するなかれ )」という表現になります。

こちらが攻めている敵を包囲するときは、完全に出口をなくすのではなく、どこかに逃げ道を残しておくこと。通常の感覚だと、敵を全滅させてしまうためには、それを完全包囲して殲滅したくなるでしょう。こっちだって怖いしね。だけど孫子は、はりきりすぎてこちらの損害も多くては、仮に戦いに勝ったとしても意味が無いと教えています。

完全に包囲されてしまった敵は、死にものぐるいで抵抗してくる。それだけに、攻めて優位に立っている味方も、思わぬ損害を被る可能性がある。また、戦いというものは、要するに「勝ち」を決めれば良いのだ。逃げ道を見せれば、敵兵は逃げ道に殺到する。それで勝ちが決まればそれでいいのだ。

天正五年十月、別所長治を三木城に攻めた豊臣秀吉は、このことをよく心得ていました。秀吉勢が外まわりの塀をうちやぶって攻めこみかけたとき、城内からは笠がさし出された。(これは降参の合図です)秀吉側の寄手の兵は、これを許さず、あくまで全滅作戦を続けようとしました。

すると秀吉は、「そうはいわぬものだ。戦さは、六、七分勝てば十分なのだ。降参人を討ち取ったりすれば、敵は必死になる。相手に逃げ道を見せて、早く勝利を得るのがよい」といって、降参人に手を出すことを許さなかった。かしこい!

最近のビジネス…

ライバルと戦え

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日本ハム・斎藤佑樹投手の経済効果がすごい。

地元札幌での観客動員数増は当然のこと。さらになんと、キャンプ予定地である名護市のホテルが、すでに女性客の予約で埋まりつつある。ファームの練習場である千葉県の鎌ケ谷スタジアムまでが、チケット予約殺到。

斎藤投手。彼の強みは、その甘いマスクだけではない。田中大将君という好敵手がいることだ。ライバルとして、ドラマチックな戦いの予感を盛り上げる。ふたりの戦いはどうなるのか?プロ野球ファンならずとも目が離せない。斎藤投手のような、スターアスリート登場のかげには、常にライバル同士の死闘がある。相撲界の大鵬と柏戸。巨人軍の王と長島。フィギュア・スケートの浅田真央とキム・ヨナ。

あのビートルズが偉大になったのも、ジョン・レノンとポール・マッカートニーという、強力なライバルが争って作曲したから。デビュー当時のふたりは、大の親友であり、いつも互いを支え合う良きパートナーだった。だがしかし、いつかビートルズは巨大な存在となり、グループに対するプレッシャーが大きくなるにつれて、ふたりの関係は劇的に変わっていく。

一発アイデアマンであり、飽きっぽい性格のジョンよりも、音楽の職人で、粘り強いタイプのポールのほうが、グループの音楽をひっぱっていくリーダーとしてはふさわしかった。だからジョンは、次第にそのリーダーシップをポールに譲るようになる。しかしジョンは、そのことを受け入れていながらも、ビートルズが、甘く優美なポール楽曲に独占されていくのを、快くは思っていなかった。

その不満は、ヨーコという援軍を得て、ジョンのリベンジの形となった。ホワイトアルバムのレコーディングの途中で、突然あらわれたヨーコは、ジョンの理解者でもあり代弁者でもあったのだろう。スタジオにベッドを持ち込んで居座るという、なかば「前衛アート」のようなパフォーマンスは、実はジョン・レノン自身のストライキだったのかもしれない。

ジョンの先鋭的楽曲は、さらにその度合いをエスカレートしていく。次第に攻撃的で気まぐれで、理解不能となるジョンの作品。ポールは、露骨に不快感を表していたようだ。ホワイトアルバムの実験作「レヴォリューション・No9」や、アビーロードA面最後の「アイ・ウォント・ユー」後半のエンドレスリフレインなどがそうだ。僕も、はじめて聴いたときは頭がおかしくなりそうになった。レコード…

怒ってはいけない

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孫子の第十二は「火攻篇」だ。

孫子の内容は、後半になってくると、どんどん具体的になってくる。敵をどういう場所でどのようにして攻めるべきかを語る、まさに「兵法書」の面目を表す。この「火攻篇」でも、その前半にあたる第一節では、火を使って相手を攻める場合の心得を、その目的や条件などについて細かく教えている。

ところが、同じ「火攻篇」の後半にあたる、第二節になると、突然にその内容が変わる。戦争の手法ではなく、将たるものの心得についての記述となるのだ。その教えとは「将たるもの感情で動いてはならない」という教えだ。(この第一節と第二節の間のつながりは、後代の編集の誤りと解釈されている)いわゆる豪傑ほど、激して大勢を見誤ることが多い。孫子はその点を厳しく戒めている。

村山孚先生らの翻訳による、孫子「火攻篇」の一説を紹介する。

一体、戦争には勝って何かを得るという目的があるのだ。いくらよく戦ったとしても、かんじんな目的を遂げなければ、むしろ悪である。こういうのを「費留」(骨折り損のくたびれ儲け)という。<中略>不利であれば行動を開始せず、何か得るところがなければ兵を用いず、やむを得ないときでなければ戦わない。これが根本である。

<中略>君主たるものは、怒りによって兵を起こしてはならぬ。将たるものは憤りによって戦いを交えてはならぬ。一時の感情ではなく、「利に合えば動き、利に合わなければ止む」という冷静な判断が必要である。怒りは時がたてば喜びに変わることもあろうし、憤りは時がたてば嬉しさに転ずることもあろう。感情はこのように元にもどることができる。しかし感情によって兵を起した結果、国が滅びてしまえば、それでおしまい。死んだものは生き返らせることはできない。

という内容。

なんとクールで理性的なことか。孫子という本は、徹底的に合理的な価値観で貫かれた兵法書である。その内容は、現代の経営指南書としても十分通用するとされ、沢山の企業経営者が、座右の書としているのも当然である。

民主主義と平和につつまれた現代。しかし現代人の日常は、さまざまな競争や争いの連続であり、社会で活動する個人の生活は、まさに「戦国時代」とも言えるかもしれない。そしてまた、毎日がストレスと緊張の連続でもあり、怒りや憤りに心が翻弄される瞬間もある。ちょっとしたすれ違い、ちょっとした言い合い、決定的な亀裂につながる。

突…

地球外生命体!

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12月3日の夜は、世界中が「地球外生命体」のニュースに沸きたつ、はずだった。ニコニコ動画でも、NASAからの発表を生中継しつつ、解説するという映像配信があり、平日の夜にもかかわらず8万6千人もの来場者があったということです。みなさんお疲れさまでした。でも実際のNASAからの重大発表を聞いて、かなりがっかりしたのだけど、みなさんそれなりに楽しまれたのではないでしょうか。

地球上の生物は、植物からミドリムシから、ネズミ、ゴキブリ、人間まで、細胞の中のDNA構造は全く同じ。だから、地球上の生命体は、たったひとつの「起源」から生まれたということになっている。そのたったひとつの起源が、どこでどう生まれたのかそれが大きな謎なのである。生命とは、地球外のどこからかやってきたものなのか、それとも地球上で生まれたものなのか。

宇宙の果てから隕石にくっついてやってきた。宇宙開発に熱心な人たちは、こういう「地球外起源説」を信じる人が多い。そうでないと、宇宙探査をやる理由がなくなっちゃうからね。でも、最近では「生命は地球上で自然に生まれた」という説が主流みたいです。原始地球の海が有機物のスープとり、そこに落雷などの電流ショックを受けているうちに、自然と高度な有機化合物が出来あがった。ちょっと、フランケンシュタインみたいでSFっぽい話なんですが、ちゃんと実験で実証もされています。

今回カリフォルニア州のモノ湖という場所で見つかった細菌は、しかし根本からおかしな生命体。地球上の生命が、体の構成物として使っている元素は、炭素(C)、水素(N)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(Si)、リン(P)の6つが必須。しかし、今回発見された細菌君は、リンの代わりにヒ素(As)を使う。だから、NASAは彼を「地球外生命体」と言ったのだ。「地球外生命体」というには、ちょっと無理があったけど、やはりこれはすごい発見らしい。

この話いずれ、映画に使われますよ。たとえば、地球生命の男性(リン型)と、地球外から来た女性(ヒ素型)のラブ・ストーリー。ふたりは、宇宙ツィッターを使った通信で、愛を育てていた。遠距離恋愛を光速ワープで乗り越え、人種の壁などさまざまな障碍を乗り越えて出会うふたり。そこで交わす抱擁。その時男性は、女性の細胞にふくまれるヒ素成分で中毒死してしまう。こういう話、面白いですか。あんまり感動的ではないけ…

天才の試練

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部長の悪口を散々並べて盛り上がった飲み会の翌日に、その議事録が部長のところにとどいたようなものでしょうか。怖いですね。やっぱし、人の悪口というものは、言わないに越したことはないのですね。

私もつい先日、偉大なるチャールズ・ダーウィン卿のことを「暇な人」呼ばわりしてしまった。いけませんいけません。綸言汗の如し。気を取り直して、いやええと、気を引き締めて、書き続けます。

天才が出来上がるには時間がかかる。結論はそういうことなのでした。でも、時間をかければ、それで天才が出来上がるのかというと、まさかそんなことはない。もし、そうならば、今頃この世の中は、天才だらけになっているはず。それでは、どのような条件のもとで時間をかけた時に天才は生まれるのか?前回紹介した、竹内薫さんの「天才の時間」という本は、実にここのところを綿密に調査されているのです。実に、興味深い結果が示されているので、以下紹介します。

アインシュタインは、頭の中に物理学のアイデアがいっぱいある時に、当時な大学教授から「あんたは才能がない」と拒絶された。そして特許庁で過ごした不遇の時代に、暇な時間を手にした。この時間が、後の「特殊相対性理論」を生む。( 逆に大学に採用となったアインシュタインの友人たちは、誰も際立った業績は残していない)

ニュートンは大学在籍中に、ペストの流行による大学閉鎖で、二年近い休学を余儀なくされる。しかしこの時過ごした、故郷のウールズソープで、微分積分、力学、光学など、現代物理学の基礎を、ひとりで作り上げてしまう。

グレゴリー・ペレルマンは、数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞。でもそれを辞退してしまう。賞金は一億円なのに。ペレルマンの場合は、数学に没頭するあまり、世間のことやお金のことは全く興味がない。だから人生そのものが常に「休暇」ということになる。竹内先生のこのまとめかた、本当に見事ですね。

そして前に紹介した、チャールズ・ダーウィン。彼はイギリスのウェッジウッド家につながる名家の出です。裕福であったために、あり余る時間があったのですが、研究に没頭する彼の努力無しには、進化論は生まれなかった。

このように、天才というものは、あたかも良いお酒が「樽の中で熟成」するような事例が、たくさん紹介されています。この他にも、ユング、エッシャー、宮沢賢治、ヴィトゲンシュタインなど、天…