ラベンダーの香り

時間旅行と聞いて「ラベンダーの香り」を連想する。NHK青少年ドラマを見て育った、僕たち昭和世代はみなそうだろう。元祖タイムトラベル小説「時をかける少女」の設定だから。時間旅行の秘密は、ラベンダーの香りがする謎の薬品にある。未来人が持って来たのだった。 

時間旅行ができれば、誰でも人生をやり直すことが出来る。自分で自分の過去を修正する。今となっては「誤ち」と分かっている、過去の行為を今の自分がやり直すのだ。これが可能ならば、誰の人生も完璧なものとなる。

「メン・イン・ブラック(MIB)3」を、東宝シネマズ日劇で見た。ステレオ3Dですよ。これまでの前2作とも大好きな私。ハチャメチャなストーリー展開でありながら、大真面目な科学定理や、冷徹な人生哲学が散りばめられている。このシリーズは、私にとってSF映画の見本みたいなもの。このシリーズのDVDは、床の間に飾っておきたい。

この「MIBシリーズ」で、なぜかこれまで封印されて来たのが「時間旅行」だ。SF映画にとって常套手段だけど、使いようによっては、シリーズ全体の流れを崩壊させてしまうかもしれない。陳腐で安易なB級映画に成り下がっちゃうかもしれない。やはり禁じ手だったのか。それともバリー・ソネンフェルド監督は、最後の手段として温存してきたのかしら。

熟練のエージェント「K」(トミー・リー・ジョーンズ)は、40年前に刑務所にぶち込んだ凶悪エイリアン「ボリス」のために殺されてしまう。しかもそれは、40年前にさかのぼっての殺人。いきなりややこしい展開だが、殺されたのはあくまで40年前の「K」だ。だからそれに気づくものは誰もいない。ある事情で唯一その事実を知る「J」(ウィル・スミス)は、彼を救うため、決死の時間旅行に出かける。「K」を救うには、彼が殺された40年前の、さらに一日前に飛んでいかなければならない。

この時間旅行のやり方がぶっとんでいる。まさに「タイム・ジャンプ」ということで、なぜかクライスラー・ビルのてっぺんから飛び降りなければならないのだ。このシーン、今回の「ステレオ3D」の威力を存分に味わなくちゃね。時空間の裂け目を瞬間移動するゾクゾクする感覚。まさに3Dを楽しむためにつくられたような設定です。さて、果たして「J」は、時間旅行の中で「K」を救えるのか。

しかし「J」は、あまりにも重要な「ある事実」を知らないのだ。なんと、自分が「K」を救うことによって、他の誰かが犠牲にならなければならないということを。しかも「K」の身代わりになる運命の、その人とは。「J」自信の人生において、とても大事な人だったというのに。(これは是非、映画で見てたしかめてくださいね)

今回のややこしいストーリー。唯一この全体像を知るのは「グリフィン」という新キャラクター。この人(エイリアン?)のキャラクター造形、いいですね。表情もファッションも、ポップで可愛らしいし。彼は5次元の世界に生きているため、未来を予知する能力を持つ。予知というよりは、未来の可能性を知る能力。この世運命は、ほんのちょっとのことで変化していくため、起こり得る未来は無限にある。

だから、このグリフィンが言うようにこの世界では「 Any thing would be happen 」。どんなことでも起こり得るのだ。別れた人とも再び会える。どんな失敗も取り戻すことが出来る。実はそうなのだ。
だけど、実際に起きることはたったひとつだけ。ただ、僕たちは、こう思い込んでいる。「人生はもう変えられないし、自分の運命は決まってしまっているのだ」と。

いいことなんて何も起こらない。そう思い込んだら人生はつまらない。いいことは何でも起こるし、いつでも人生はやり直せる。そんな風に考えられたら、人生は楽しいと思う。いまこの時こそが「時間旅行」。どんどん人生を変えていこうよ。そんなふうに考えられたら楽しいんじゃないかな。

いまの「たったひとつの人生」の他に、起こり得た1000種類もの人生。これからの人生を、どんなふうに思い描くのも自由。起こり得なかった人生。起こり得た人生。僕たちの人生は、こうした沢山の「もしも」、あるいは無限の「もしも」の中から選び出された自分の人生だ。そしてそれは、たくさんの偶然が重なり合って生まれた、たったひとつの奇跡。こんなことを教えてくれた、グリフィンのキラキラした瞳が印象的だった。


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