智名無く勇功無し
動物の毛先を持ち上げたからって「力持ち」とは誰も言わない。 太陽や月が見えたからって「眼が良い」とも言われない。 雷鳴の大きな音が聞こえても「耳が良い」とは、誰も思わない。(☆1) 兵法の書「孫子」にある言葉。第4編にあたる「形篇」の途中から出てくるくだりです。これは別に「小さな手柄を自慢してはいけない」と言っているのではないのです。勝負の達人というものは、このように「力もいらない簡単な方法で勝つものだ」という教えなのです。 大騒ぎをし、大勝利をあげて、皆から喝采を受けるような勝ち方は、最善の勝ち方ではない。むしろ、誰にも気づかれずに、何の功績も努力もないような形で勝つ勝ち方がすばらしいのだ。こう言っているのです。 誰だって、目立った活躍をとげてまわりからの喝采をうけたい。大々的勝利を得て、その功績を認められたい。ヒーローになって目立ちたい。人情としては当然。しかし、本当の勝利者というのは、そういう「大騒ぎ」はしないんだよ。「孫子」は、そう教えています。