失踪したくなった時には
むかしむかし「蒸発」という言葉が流行ったことががある。真面目一徹だったサラリーマンが、ある日突然消えてしまう。一家を笑顔でささえていたパパがある日突然消息をたってしまう。誰しも「会社にいきたくない」とか「学校にいきたくない」という気持ちになることがあるだろう。 「男はつらいよ」シリーズ第34作、「寅次郎 真実一路」では、米倉斉加年演じる熟年トレーダー富永が失踪。残された美しい奥様(大原麗子)に頼まれて、人のいいの寅さんが富永の捜索に大奮闘する。牛久から大手町まで遠距離通勤するエリートサラリーマンが、ふと消えてしまいたくなる。マイホームの夢を達成した後、熟年男性を襲う空虚感。そんな当時の世相が鮮やかに描かれていた。