潜伏するパンジー



このパンジーが植えられたのは、ケヤキが落葉する前だったはず。でも今は、こうして落ち葉のクッションに埋もれるようにして咲いている。水彩画に描くために、一生懸命アイフォンのレンズを向けるのだが、花がみんなうつむいていて、表情がわからない。

目の前にある大きなケヤキの樹のせいで、我が家の狭い庭は茶色い落ち葉で埋まってしまう。おそらくこの落ち葉のつもったところは、冬を越す虫たちの快適な寝床になっていたりするのだろう。パンジーにとっても、寝心地の良い枕のようにも見える。

まるで、しおれているようでもあり、元気がないようにも見える。ところがどっこい、この花たちは、寒い冬の間ずーっとこのままのペースで咲き続ける。雪がつもったところで、何知らぬ顔で咲いている。じつにしぶとい花ではないか。

先日まで、燃えるような花を開いていたカンナは、すっかり枯れてしまった。柿の木は、葉っぱも柿の実もなくして、枝だけになった。こんな時期に、こうして地面に這いつくばるように咲いているパンジーは偉いな、と思う。

別に自己主張するように咲くのでもなく、うつむくようにしながら、じっと潜伏。まるで出家遁世して山里に庵を結び、深い深い瞑想にふける世捨て人のようだ。30代で京の都を離れて大原へ、そして日野の山中へと潜んだ、方丈記の鴨長明の姿に重なって見える。

世を捨てて何を想うや冬の花

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