マネー・ボール

私を野球に連れてって

映画「マネー・ボール」は実話に基づいている。実話に基づいているどころか、主人公のビリー・ビーンはいま現在もなお、オークランド・アスレチックス現役であり、映画に描かれたままに仕事を続けている。(☆1)アメリカ大リーグで、運営費がもっとも少ないチームでありながら、地区優勝の常連にまで上昇させた稀代のGMだ。

ベースボール。そこは素人にはわからない魔物が潜む。前途ある若者を誘い込み破滅させる迷宮ワールドである。誰もが確かなことはわからないまま人生をかけた戦いが繰り広げられているのだった。経験と勘がものを言う、男のスポーツ野球界とはそういうものだった。

そこに、オークランド・アスレチックスは、経営学的データ野球を持ち込んだ。野球の勝利の方程式。全選手の詳細データを分析し、徹底した野球経済学を貫くことで球団を地区優勝へと導いた。弱小で最小予算チームだったからこそ成し遂げられたとも言える。この映画以来、野球界だけでなく市場取引やビジネスの世界でも「これまでの経験と勘」などというものは意外に役に立たない、ということが証明されつつあるらしい。

主演のブラピが惚れ込んだというだけある実に痛快なストーリーだった。人はなんのために人生を生きるのか、人生にとってお金とは何なのか。根源的な問いを見るものに投げかけてくる映画でもある。そして、真実の物語は、時にフィクションよりも何倍も不思議で美しい。


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☆1:ビリー・ビーンは、現在は再び成績低迷するオークランド・アスレチックス上級副社長



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