奈良井のヒミツ



中山道34番目の宿場町だった奈良井を訪ねた。

信濃の山々の緑が空に向って輝く天空の宿場町。中山道はぜんぶで六十九次あったというから、ここは全行程の約半分にあたる。鳥居峠という難所の手前であり、信濃路11宿の中でもっとも標高が高い場所だ。

「よっしゃ、ここで体力をつけておきましょう」と、ゆっくりと身体を休めたい旅人がたくさん泊まったそうだ。

「奈良井千軒」という言い方が残るように、いまも1キロもの街並みが保存されている。中央の通りは8Mの幅があって意外に広い。当時の賑わいが目に浮かぶようだ。しかし、ここの景色はどうしてこんなに自然なんだろう。じつは、この町の景観保全には、あるヒミツがあった。

奈良井の屋根は、残念ながら信濃宿本来の板葺石置屋根ではない。濃い茶色の鉄板葺だ。メンテナンス上しかたない。しかしそれを3/10勾配(3寸勾配=16.7度)とすることが条例で規定されていて、通常よりも緩やかな勾配になっている。そのおかげで、中央の通りにいる限り、鉄板の葺は見えない。現代風の屋根は旅人の目から隠されているのだ。

おかげで、この奈良井の景観はいまも完璧。通りをそぞろ歩き往時のままの水場で清流に手をひたせば、完全に江戸時代にタイムスリップしてしまう。



Popular posts in Avokadia

レイチェル・リンド

ヤノマミ族のこと

帝国ホテルについて知ったかぶり