TVスター
YouTubeで、昔のテレビ番組をいくつか探していたら、いつのまにか偶然に「モンキーズ」のTVシリーズのデータに出くわした。なんとNBCで放送されていたシリーズがほとんどフルバージョンで残っているではないか。ケロッグのCMまで当時のままだ。
早速、シリーズ順に観てみる。全体のストーリーはぜんぜん覚えていないのに、なぜか映像の細部をあちらこちら覚えていた。特に、番組挿入歌の部分は、ひとつひとつのカットにまで見覚えがある。記憶ってすごいものだ。当時はビデオもなく、テレビで一回みただけだと思うけど。
当時の僕は小学2年生。田舎で育った僕には、ビートルズは遠い存在だったけど(当時はほとんど情報がなくて、僕がビートルズを発見するのは中学生になってから)モンキーズは、少ないテレビ放送網を通じて田舎の少年にまで届けられていた。
ビートルズと違って、モンキーズは「テレビによって創り上げられたバンド」と言われる。彼らは、レコーディングでは演奏することを許されず、プロのミュージシャンをバックに歌っていただけらしい。その後いくつかのアルバムが、彼ら自身によって作られたのだが、それらはあまり評価もされず、いつか彼らは忘れられていく。
この話を聞くと、いまならば「捏造のバンド」とか「テレビの嘘」とか言われそう。でも、そんなのいいんじゃないの。今見ても、十分に面白くてエネルギッシュなモンキーズ。まさにテレビが作り上げたスター。それでいいのだ。ファンが自分の夢として大事にしていればそれでいいのだ。それがTVスターというものだ。
メンバーの近況を伝えるインタビュー映像なども出てきた。一番人気だったデイビー・ジョーンズが早世してしまったのは残念だけど、ほかのメンバーはいまも元気そう。当時のゴタゴタはすっかり切り抜けて、すっかり落ち着いた初老のモンキーズ。みな、ジョークだけは健在なのが嬉しい。
ピーター・トークは「創られたバンド」であることに嫌気をさして、モンキーズを一番先に脱退した。彼のインタビューもあった。彼はこんなことを言っていた。栄華を極めたTVスターだけが味わう人生の艱難。それをくぐり抜けた彼ならではの味のある言葉だと思う。
「みんな自分自身のヒーローになれれば、それでいいんじゃない?」