ミツバチ民族

ミツバチたちは、信じられないほど賢く、効率良く花蜜を集めることが出来ます。なにか特殊なコミュニケーション能力を使って、巣のまわりにある食料の分布情報を、交換しているにちがいありません。

カール・フォン・フリッシュが発見した「8の字ダンス」がそのコミュニケーションの基本です。花蜜のある食料源を見つけた「働きバチ」は、その食料源の位置と距離とを、その独特なダンスによって、他の仲間の「働きバチ」に知らせるのです。お尻の振り方や、ダンスの中で動く方向が、エサ場の場所を教える言葉になるのです。

しかし、それだけでは、花蜜を集める仕事を最大効率で進められるとは限りません。できるだけ沢山の花蜜を集めるためには、できるだけ多くの「働きバチ」を、できるだけ豊富に蜜のある花のところに、集中させる必要があります。ミツバチは、一体どのような方法で、それを実現しているのでしょうか。その秘密は、ミツバチ社会の「上司のふるまい」にありました。(カール・フォン・フリッシュは、1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞)

「動物たちの心の世界」(マリアン・S・ドーキンス著 / 長野敬他訳)の第4章に、ハチ社会における情報交換と報酬のシステムについて解説がありました。

ここで言う「上司」とは「働きバチ」のように巣を出て働くことをせず、巣の中で花蜜などの食料を待ち受けている「受け取りバチ」のことなのです。実際に、彼らを「上司」と呼んでいいかどうか微妙ですが、会社の営業部で言えば、営業マンの帰りを会社で待っている係長か課長みたいなものでしょう。

彼らは、栄養豊富な良質なエサを運んできた「働きバチ」を褒めるのだそうです。「おおー!よくやったね〜。えらいえらい」などと、ねぎらいの言葉を掛けるのではありません。単純に、質の良いエサは、さっさと手早く受け取る、ただそれだけです。だから、正確には「褒めている」というよりは、ただ「おいしそうなエサに飛びついている」だけかもしれません。

でも、実際に労働をしてエサを運んできた「働きバチ」にとっては、「受け取りバチ」がなかなか受け取ってくれないと、それは「いまいち喜ばれていない」というサインになるのです。その代わりに「さっと受け取られる」ということは、「おお、俺がやった仕事が喜ばれている」というメッセージになるらしい。それなので、さっさとエサを受け取ってもらった(60秒以内)場合に、そのハチは、激しく「ダンスを踊る」のです。逆に、巣に帰ってからも100秒以上待たされたハチは、「あまり積極的に踊らない」ということになるらしい。

その結果、褒められたハチは激しく踊り、褒められなかったハチはあまり踊らない、という行動の差が歴然としてきます。そしてその後は、多くのハチが、よりエサが豊富なエサ場のところへと導かれていく。そういうことなのだそうです。

人間社会における会社の営業部で、同じシステムを採用するとどのようなことになるでしょう。

係長に「君は今日は大変な成績をあげたね〜」と褒められた営業マンが、はげしく「成績向上ダンス」を踊る。それを見たほかの営業マンも、つぎにはそのダンスのメッセージに同調して営業活動を行う。うーん、その結果は一体どうなるのだろうか。

みんなが同じ顧客のところへ殺到?。いやー、こんな単純な方法だけではうまくいかないな。しかしミツバチの世界の英知を、人間社会に何とか応用できないものだろうか。

Honey Bee photo by : Nam Nguyen

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