巻き尺に気をつけろ



でんでんむしではありません。テープ・メジャーといいます。つまり巻き尺です。こんな便利なもの、いったい誰が発明したんだろう。

僕は以前、テレビ局でスタジオセットのデザインの仕事をしていました。スタジオセットといってもいろいろあって、大河ドラマなどの巨大で重厚なセットから、天才テレビ君みたいに子供向けにカラフルなものまで、幅広いものがあります。デザイナーそれぞれに得意分野があるので、人によって、報道番組の専門家とか、ドラマの専門家などに分かれます。

専門が違っていても、共通の概念として最も重要なものは「寸法」です。どんな大きさのセットを作るかは、そのスタジオの大きさ、天井までの高さ、撮影したい映像のイメージによって決まります。それから、もっと大事なことは、出演者の大きさにあわせることです。巨大なテーブルを作って、これはカッコいいなんて思っても、実際に出演者が座ってみて、変な感じだったり、大きすぎて顔も見えないような状態ではどうしようもありません。

さて、そこでその寸法なのですが、日本のテレビ業界では、その寸法の単位に何を使っているのかご存知でしょうか? なんと、それは「尺」や「寸」なのです。つまり「尺貫法」で、いまでは日常生活では使われていない単位です。

デジタル・ハイビジョンカメラなどが並ぶ、近代的な設備のスタジオで、デザイナーと大道具さんたちは「このテーブル、あと2寸高くしよう」とか、「たっぱ8尺2寸5分でお願いします」みたいな会話をしているのだから面白いです。

バーチャルスタジオのように、最新技術の粋を集めたテレビ局で、とても古いルールが使われているのには、やはり理由があります。テレビの世界が日本で産まれた時、テレビ美術の表現手段のすべてを演劇や映画の世界から持ち込んだためと言われています。テレビ美術にとって、一番古いルーツは歌舞伎や文楽の世界にまで遡ることになるのでしょう。

この「尺寸」の寸法なのですが、実際に使ってみるととても便利です。もともと人間の体の大きさを寸法に置き換えたものなので、1尺なんかは、だいたい自分の足の大きさくらいで考えられます。1間は、6尺ですが、それは畳の大きさです。人間の体の大きさや、家の部屋に使われている大きさに関係しているのでとてもイメージしやすいのです。

そしてまた、意外なことに、この「尺寸」による寸法は、イギリスで使われていた「ポンド・ヤード」の寸法の感覚にもとても近いのです。実は、この感覚の近さが、僕にとって大きな落とし穴になったことがあるのです。 それは、次の機会に書くことにしますね。

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