モンブラン
モンブランというケーキは、ケーキのスポンジ生地に、クリのクリームをかぶせたもの。二つのお菓子素材を組み合わせたもので、いわば異種混合タイプのアイデア商品だ。茶色いクリクリームを生地の外側に塗っているうち、それが峻険な山肌のように見えてきた。そのようにしてこのお菓子は「モンブラン」という新しい次元に進んだのではないだろうか。
いま大学は、学期末の繁忙期に突入しており、卒業を控えた大学院の修士二年生にとっては、本当に大詰めのシーズン。どちらかというと、普段は学生の自主性にまかせる自由放任主義の研究室だが、いまだけは教員も学生も顔色を変えて完全臨戦モードにならざるを得ない。
今日もある留学生の学生と長時間のミーティングをしていた。その学生さんは、これまで二つのテーマを別々に進めていて、どちらも中途半端のままになっていた。これでは、どちらのテーマで行っても完成度が足りないな、ということで頭を抱えてしまった。しかし、ふたりで二時間ほどうんうん唸っているうちに、妙案が浮かんだ。
モンブラン!
ふたつの素材を組み合わせて、新しいものを作る。これだ! これまで別々に進めてきたふたつのテーマを合体させて、ある別次元の結果を引き出すのだ。これならなんとかなりそうだ。本日の仕事の終わりに、モンブランに感謝する私であった。これも、おとといの晩に、夏休み中に食べたこのケーキを水彩画に描いてみた効能なのだろうか。
しかしこの研究、最後の最後まで気は抜けない。