投稿

12月 13, 2009の投稿を表示しています

人物を見る

レッド・ツェッペリンがデビューした当時は、まだまだラジオ番組の権威というものが存在したのだろう。今でこそ伝説的ロック・バンドと言われるレッド・ツェッペリンも、ラジオ番組出演のためのオーディションを受けたらしい。当時のプロデューサーによるオーディション・コメントが残されていた。なんとそれは「このバンドのやっている音楽は、時代遅れである」という評価であった。同じくオーディションを受けた、デビット・ボウイは「個性がない歌手」、Tレックスは「思い上がったクズ」という評価に終わったらしい。(12月18日 毎日新聞夕刊より)
NHKの同僚だったTディレクターから、以前これと似たような話を聞いたことがある。たしか札幌放送局でのことだが、当時無名だった、ドリーム・カムズ・トゥルーのメンバーが、NHKドラマの主題歌オーディションに応募してきたらしい。テープ審査であったが、Tディレクターは、そのブルーノートを使った斬新なメロディーに驚いたとのことだが、結果のところ、あえなく落選。
やはり、NHKのディレクターであろうが、BBCのプロデューサーであろうが、本当のスターを見いだして、未来へと送り出すなんてことは、実は至難の業ということなのだろう。だって、おそらく未来のスターとはいえ、最初はみんな、ただの田舎ものみたいな風情で現れることだろうから。人間の才能や、将来の可能性なんて、目に見えるものではないのだから。
一方で、以下のように素晴らしい話も存在する。
____________________

名人佳話
宮本武蔵に関する逸話の一つであるが、武蔵がある日名古屋で尾州藩の槍術指南役であった田辺長常を訪ねた。その時たまたま玄関に居あわせた長常は、佇立する武蔵を見て、これはみごとと嘆じ、しばし見つめていたという。(これは、安岡正篤先生が、尾州柳生の直系である柳生巌長氏から聞かれた話である)
安岡正篤著「人間を磨く」より p.105
-

九方皐

馬が特に重要な国力の一つである秦国の穆(ぼく)公の時のこと、ある日、公は名馬を見抜く名人である伯楽を呼んで「お前も年をとった。お前の一門に馬を相(み)させられる者があるか」と聞いた。 伯楽は「自分の子供はみな下才なので、良馬程度ならば見方を教えられるのですが、天下の名馬となると、これの見方を教えることは口ではできません。そのかわりに、私の貧乏仲間に九方皐(きゅうほうこう)という者がおります」と答えた。
そこで、穆公は九方皐を引見して馬を求めさせた。三ヶ月たったある日、彼は「見つけました。沙丘におります。牝の黄毛でございます」と報告した。穆公は早速引き取らせに使者を遣ったところ、それは牡の黒駒であった。「だめだ。お前の推薦した九方皐というやつは、馬の毛色や牝牡さえわからぬ奴ではないか」と伯楽を叱った。
伯楽は、逆に感じ入った様子で、こう言った。「そうですか、九方皐はそのレベルにまで達しておりましたか。彼が観るのは天機というべきもので、その精を得て、その粗を忘れ、その内に在って、その外を忘れ、その見るべき所を見て、その見ないでもいい所を見ず、そんな所にかまっていません。彼が馬を相する段になると、馬なんてものを見ていません、馬よりも貴いものがあるのでございます」。
安岡正篤著「老荘のこころ」より p.72 原典は「列子」説符、「淮南子」道応訓 つづきを読む>>>