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2月 28, 2010の投稿を表示しています

ぼくと1ルピーの神様

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ムンバイのスラム街を舞台にした「スラムドッグ&ミリオネア」が世界的大ヒットとなった理由はなんでしょう? 以下のA〜Dの4つから、答えを選んで下さい。
A:ムンバイのゴミ溜めをパワーみなぎる映像美でとらえた。
B:原作の物語、脚本の構成が素晴らしかった。
C:インドの音楽と、センス溢れる現代的音楽の融合が成功。
D:無名の俳優たちの、純粋で体当たりの演技がよかった。

ファイナルアンサー。答えはBです。あたりまえです。

原作である「ぼくと1ルピーの神様」[*1]を読んでみて、この答えが「B」であることを確信する。世界の誰もが知っているようで知らなかったインドの現実。インドで生まれた孤児の人生に起こりうる出来事にそって、現世の不可思議な姿を描く傑作だ。

[*1] 原題: Q $ A / 原作:ヴィカス・スワラップ
ランダムハウス講談社刊 ____________________

350ページを120分に

原作と映画ではいろいろなことが違う。当たり前のことだ。すばらしい本がそのまま素晴らしい映画になるとは限らない。「ぼくと1ルピーの神様」の人物構成や物語の流れを、仮にそのまま脚本にしてしまったならば、出来上がった映画は、長大で理解不能なぐちゃぐちゃなものになってしまっただろう。なにしろ原作の文庫本で444ページ、英語版ペーパーバックで350ページほどの内容(私は文庫本を3日で読みました)を、たった120分の映像で語らなければならない。しかし映画「スラムドッグ&ミリオネア」とその原作「ぼくと1ルピーの神様」の場合、どちらもそれぞれの表現形態のままに、素晴らしい出来栄えだ。


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サマー・ウォーズ

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昨年夏話題をさらった映画「サマー・ウォーズ」のDVDが、3月3日ついに発売。興行収入16.5億を達成し、数々の賞を受賞したこの作品の魅力が満載だ。ネットや口コミでの評判から、一躍大ヒットとなった「時をかける少女」(2006年)を手がけた、細田守監督が満を持しての長編オリジナル。キャラクターデザインの貞本義行氏、や脚本の奥寺佐渡子氏など、前作に引き続いての参加スタッフの顔ぶれは、ファンの期待を盛り上げるに十分の布陣。( BD & DVD )
日本の社会全体が、巨大な競争システムに覆われてしまった近未来。この映画に登場する「OZ」は、アバターによる最新鋭のシミュレータであり、社会システムそのものでもある。そしてそこはすでに、各個人がそれぞれに「世界との関係を作る」場所でもある。そして、CMU・ロボティクス研究所で、ある人物によって作られた、強力なキャラクターは、全てのアバターを吸収してしまおうとする。
大家族の絆や、先祖代々の血縁をはなれて、巨大な社会に浮遊してしまった個人。現代社会における「受験競争システム」や「効率的経営システム」というものは、その個人をいとも簡単に取り込み、そしていつか、個性のない一単位に変えてしまう。子供たちに受験戦争から逃れる道はなく、大人たちに出世競争から逃れる方法も無い。大人から子供まで、各個人が終わりのない競争に追い立てられる。
サマー・ウォーズで暴れ回る「ラブ・マシーン」とは、アバター社会における強力な「集票マシーン」そのもの。まるで、たった一回の衆議院選挙で、圧倒的多数の勝利を収めた民主党新政権そのものだ。ラブ・マシーンと、民主党のある豪腕政治家の姿は、何か重なるものがある。浮流する個人の集合体が、いつか雪崩となって、暴走する集団に変わってしまう恐怖。浦沢直樹氏による「20世紀少年」の「ともだち=友民主党」にも通じるテーマがここにある。

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cubism

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卒業研究室「エアープロジェクト」に所属する学生による、作品を紹介します。

まずは音楽作品。LOW HIGH WHO? サイトから、ビートメイカー "cubism"のブランドで、発表しています。アルバムタイトルは " Rainbowholic Before Period "  無料ダウンロードリリースなので、是非聴いてみて下さい。ジャケットデザインも素晴らしいですね。 cubism myspace

彼らとは、今年から「サウンドを視覚化」したり、「マルチチャンネルの音声トラックを送受信したり」という実験を進めたいと考えています。それから「マッシュアップTV」というコンセプトで、映像編集データに様々な「メタデータ」を組み合わせて、ユーザーが自由な形で楽しめる、新しいテレビ番組の形も探っていきたいと思います。忙しい研究の一年になると思いますが、楽しみです! 

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スラムドッグ$ミリオネア

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スラムとは「貧困で犯罪に満ちた地域」のことだが、インドのスラムはそんなものじゃない。映画「スラムドッグ$ミリオネア」の監督、ダニー・ボイルはそう言う。この映画に描かれているスラムとは、煮えたぎるようなエネルギーと活力、人々のポジティブな生命力を生み出す、パワーポイントのことだ。この映画自体が、混沌の中から生まれる圧倒的なエネルギーに満ちている。

だがそれにしても、インドのスラムは、映画を撮影する者にとっては悪夢のような場所ではないだろうか。映画の製作というものはとにかくお金のかかるもので、効率的に整然と撮影を進めない限り、時間(つまり予算)が湯水のように消えていくもの。明日の予定はおろか、当日の撮影自体が可能かどうかも怪しい場所で、何もかもがその日任せのような撮影は、監督にとって相当なストレスだったろう。

昨日はあったはずの建物が、今日は突然壊されていたりするのが、ボンベイでは日常のことだそうだ。東京での映画撮影でも、長い撮影期間中に一度くらいは、予想外な状況で撮影不能となることはある。しかし、それが日常的におきる場所とは、撮影クルーにとっては地獄だろう。とにかく先々のことを予想して計画することが出来ない場所で、「一日待っても、1カットも撮影できない状態が続き」悩まされ続けたこの映画。この作品を歴史的な傑作に仕立て上げたダニー・ボイルだが、この作品の撮影は「他の映画ではあり得ない難しさ」だったと語る。

悠久なる時間の流れ、壮大なる宇宙の創造原理、永遠に繰り返される人生の因果応報。そもそもこの映画の原作「ぼくと1ルピーの神様」には、人生の不思議で深い縁(えにし)描かれている。こういう東洋的な考え方を、映画制作のプロセスに取り込むことで、インドの神様を味方につけたのかもしれない。そしてさらに、ダニー・ボイル監督には、この幸運を呼び寄せる秘密兵器があった。それは、何かというと...

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カーリング作戦要務令

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「カーリング女子日本代表のチーム青森が、1次リーグで3勝3敗で並んでいたスイスと対戦して敗北した。ミスを連発し、阿部監督も意図が分からないと首をかしげるようなショットを放つ場面もあったという。 日本は2エンドを残して、力尽きた。第8エンドで2点を奪われ、4-10。スキップの目黒は、相手選手に握手を求め、ギブアップの意思を表示した」

じっくりと勝負を見続けることができない性格なので、早朝のオリンピック中継を見ながらも、この試合の展開がいまひとつ読めなかった私。しかし、NHKのアナウンサーと解説者の話を聞いていると、この試合では、スイスチームのほうが一枚も二枚も上手であったということは良く分かりました。とにかく、スキップ(主将)のオットー選手のショット成功率が94%であったとか、ミスの目立った日本に比べて、スイスチームのプレーの精度の高さが目立ったと聞きます。

一方で「作戦の進め方」など、経験の差に言及する評論も聞きます。「氷上のチェス」と言われるカーリング、試合の進め方、その組み立てがものを言うのですね。「日本チームは、ここで点数を取ったというよりも、『取らされてしまった』ということ」という解説者の言葉が象徴的でした。スイスチームは、ショットが安定している上に、精神面でもしっかりと落ち着いていたようです。着実に「作戦を遂行している」というような、選手の自信に溢れた表情が強く印象に残りました。

たった8個のストーンですが、その配置は試合ごとに千変万化、ゲームの展開にはあらゆる可能性があるでしょう。冷たい氷の上で、世界レベルでの緊迫したゲーム。その複雑な展開を読み、冷静な判断を続けるというのは、どれだけ難しいことかと思います。

本日、全試合が終了。スェーデン(金)、カナダ(銀)、中国(銅)、スイスは4位、日本は8位という結果でした。日本に苦杯をなめさせたスイスを、三位決定戦で下したのは中国。初出場ながら堂々の銅メダルを獲得しました。唐突ですが、その中国には、「孫子」という歴史的名著があります。古来からの戦闘に関する英知をまとめた、兵法の決定版です。戦略的スポーツである、カーリングにおいても、作戦要務令集として、役立っていたのではないでしょうか。

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