何をあくせく


チューインガムも携帯電話も、僕たちの生活のよき「暇つぶし」なのね。

ガムをくちゃくちゃやりながら、鼻歌まじりに携帯をいじる。おっと、お友達からフェースブックだ。コメントしなくちゃね。あいつ、いまフィレンツェにいるんだ。ちょい、くやしいけど、イタリアから写真が見れるなんて(こんな風)、超たのしー。

ガムも携帯も、そんな感じで気楽に遊んでいる時が一番ですね。

それがまあ、なんだって? 一台の携帯電話で、日本中の大学入試関係者が色めき立つことに。メディアもこぞって大騒ぎですね。入試会場の机の下で、左手片手だけで問題を入力できるなんて、知らなかったな。これはこれで、たいした能力だし、たいした技量ですよね。しかし、それにしても、大学入試というものは、受験生当事者にとっては、それだけ大変な負担だということですよね。

17歳から18歳ころというのは、人生で一番楽しい時期のはずだ。恋愛とは何か。人生とは何か。時間を忘れて議論したり、わけのわからない悩みにぶつかったり。親に反抗してみたり、先生に食ってかかったり。情熱をかたむけて、自分の人生と向き合う大切な時間だろう。

しかし、その時期に立ち向かわなければならないのが、大学受験。おちおち人生についてなんか考えていられないんだ、今の若者は。今回の高校生のように、大学受験のために、すべてのエネルギーを使い果たしてしまい、大学に入学したときには、惰性のような人生のスタート地点に立たされている。終わったのは、学歴社会という選別作業だけ。人生の大事な問題は、どこかに置き忘れたまま。

石火光中、長を争い短を競う。いくばくの光陰ぞ。
蝸牛角上、雌を較べ雄を論ず。誇大の世界ぞ。☆1

僕たちの人生なんていうものは、宇宙の悠久の時にくらべれば、石と石がぶつかって火花が飛ぶ、そんな瞬間にすぎないのですよ。そんなものなのに、長い短いを争っても意味がないでしょう。

僕たちの住んでいる世界などというものは、この宇宙全体にくらべれば、カタツムリの角の上のようなものですよ。そんな狭い世界で、勝った負けたと騒いでみてもなんになりましょうか。

さあて、大学受験に就職活動。めんどくさい勝負事は、ちょっと置いておいて、ガムでもほおばりながら、考えてみましょうよ。ぼんやりと。人生について。携帯電話を使って、親や友達とお話ししましょうよ。カンニングの道具になんかしないで。一瞬の人生だけど、ゆっくりと味わえば、それなりにながぁーく、楽しめますよ。

☆1 「菜根譚(中国古典百言百話1)」PHP出版 / 吉田豊他編 
第150頁 「なにをあくせく、狭いところで」より

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