二卵を以て千城の将を棄てる

イノダコーヒーの中庭

イノダコーヒーでのモーニング。
トーストに乗ってきた目玉焼きを食べつつ考えた。

人事評価的について「減点評価ではなく加点評価」でという話がでることがある。つまり人を評価するのに、失敗したことを減点するのではなく、プラスになったところだけ前向きに評価しましょう。ここで言いたいことは「失敗をおそれずにみなさん勇気を持ってチャレンジしよう」ということである。


だがなかなかそうは出来ない。いざ人事評価の段階になると「キミは、なになにのところが足りなかったから」とか、「なになにが出来ていないから」と、減点の理由ばかり説明されたりする。いまの学生さん達が、履歴書上の「失点を減点される」をとても怖れるのは当然だと思う。世の中がそういう風に考えるということを、みな知っている。

就職戦線でも大学入試でも「一芸に秀でたものを採用」というような、前向きの話をあまり聞かなくなってしまった。これからのAO入試のありかたも議論を呼んでいる。

「二卵を以て千城の将を棄てる」とは、多少の傷があるということで立派な人材を棄ててはいかん、という子思(しし)の言葉である。子思は孔子の孫にあたり、一説では「中庸」の作者ともされている。

戦国時代の衛で、子思は苟変(こうへん)という人物を将軍として推薦した。ところが人々は「苟変は役人時代に、一軒の家から卵を二つづつ徴収して私収入にした」ので、そういう奴は用いられない、と言うのだ。

そこで、子思は「たったふたつの卵のことで、国を守る楯となり城を守る素晴らしい人材を棄てるのか」と言った。眼のある人が人材を使うとは、匠が木を使うようなものだ。柳も梓も大事な用材であるし、大木に数尺の腐った部分があっても、そんなものは気にしないものだ。多少の傷があっても、人材の良さを見抜きなさい。(☆1)

29日の朝日の「逆風満帆」で田原総一郎さんの半生を知った。(☆2)なんという破天荒な人生。これだけ傷だらけでのギリギリの体験が、これだけの人物を生むのかとしばし呆然。こういう生き方をいまの若者に勧めてはいけないのだろうか。


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☆1:現代活学講話選集1 安岡正篤
「十八史略(上)」第二章 中国思想の淵源より

☆2:朝日新聞「逆風満帆」ジャーナリスト 田原総一郎(上)


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