インドカレーの食べ方

インドは神秘の国。人々はガンジス川で身を清め、来世の存在を信じる。しかし一方でITパワーも高まり、若者たちは向上心とバイタリティーに溢れている。


「嵐にしやがれ」で、ムンバイのカレーの味を探して、銀座にあるカレー専門店を三カ所巡っていた。先日そのうちの一軒の「オールド・デリー」に行ってみた。バターチキン・カレー、多彩なスパイスが素晴らしかった。これはインドだー。

こういう食べ物を食べていると、気持ちがゆったりとして、悠久の時に身を委ねているような気分になる。じっくりと煮込まれたスープには、時のかけらも一緒に溶け込んでいるような気がする。そんな気分でいたところ、せわしそうな感じのビジネスマンが、突然隣りにやってきた。

彼は、汗をかきながら、超スピードでそれを平らげていってしまった。時間がなさそうで気の毒。僕自身、御飯を食べるスピードはかなり早い方なので、人のことは言えないのだけど、ちょっともったいない気がした。

分単位単位のタイムテーブルをつくり、分単位でものごとを動かす日本社会。その正確さによる高い生産性が看板。しかしこれじゃ社会全体が工場だ。生産性が高くともモノが売れないのなら仕方がないし、なにより人々の精神が不幸になっているのが困ったことだ。

僕は、迅速過ぎる社会へのささやかな抵抗として、このバターチキン・カレーくらいは、ゆっくりといただくことにした。インドの悠久の時間とともにね。そしてその日は、インドのような土曜日になったのだった。

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