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9月 4, 2016の投稿を表示しています

奈良井のヒミツ

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中山道34番目の宿場町だった奈良井を訪ねた。

信濃の山々の緑が空に向って輝く天空の宿場町。中山道はぜんぶで六十九次あったというから、ここは全行程の約半分にあたる。鳥居峠という難所の手前であり、信濃路11宿の中でもっとも標高が高い場所だ。
「よっしゃ、ここで体力をつけておきましょう」と、ゆっくりと身体を休めたい旅人がたくさん泊まったそうだ。
「奈良井千軒」という言い方が残るように、いまも1キロもの街並みが保存されている。中央の通りは8Mの幅があって意外に広い。当時の賑わいが目に浮かぶようだ。しかし、ここの景色はどうしてこんなに自然なんだろう。じつは、この町の景観保全には、あるヒミツがあった。
奈良井の屋根は、残念ながら信濃宿本来の板葺石置屋根ではない。濃い茶色の鉄板葺だ。メンテナンス上しかたない。しかしそれを3/10勾配(3寸勾配=16.7度)とすることが条例で規定されていて、通常よりも緩やかな勾配になっている。そのおかげで、中央の通りにいる限り、鉄板の葺は見えない。現代風の屋根は旅人の目から隠されているのだ。
おかげで、この奈良井の景観はいまも完璧。通りをそぞろ歩き往時のままの水場で清流に手をひたせば、完全に江戸時代にタイムスリップしてしまう。


よりどころ

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長いあいだ苦労を重ねて成功をつかむ。そういう体験をした人の話では、逆境を乗り越えるのに「心のよりどころ」となったものについて語られることがある。「恩師からもらった言葉」とか「友人との約束」といった精神的な支えだけでなく、「金メダル」や「報奨金」といった現実的なモノも強い「よりどころ」となることがある。
この赤いスポーツカーは、彼の持ち主を46年間もの間支え続けてきた。長野県から東京の美術大学を卒業してデザイナーとなった彼の持ち主は、なかなか仕事がもらえない時代が続いた。そんな時に、くじけそうな気持ちを支えるために諏訪の実家から贈られたのが彼、真っ赤な「トヨタS800」だったのだ。
彼の持ち主というのは、画家・原田泰治さんである。実家の両親が貯金をはたいて買ってくれた彼が原田さんを奮いたたせ、成功に至るまで支え続けた。幼い頃に小児麻痺のために足が不自由となった原田さんのため、足を伸ばしたまま運転できるし、腕でブレーキをかけるための特注のレバーも付いている。
彼は今もピカピカの状態のまま、諏訪湖畔の原田泰治美術館ロビーで佇んでいる。原田さんによっていかに大事にされ愛されたのか、誰が見ても一目でわかるはずだ。