よりどころ


長いあいだ苦労を重ねて成功をつかむ。そういう体験をした人の話では、逆境を乗り越えるのに「心のよりどころ」となったものについて語られることがある。「恩師からもらった言葉」とか「友人との約束」といった精神的な支えだけでなく、「金メダル」や「報奨金」といった現実的なモノも強い「よりどころ」となることがある。

この赤いスポーツカーは、彼の持ち主を46年間もの間支え続けてきた。長野県から東京の美術大学を卒業してデザイナーとなった彼の持ち主は、なかなか仕事がもらえない時代が続いた。そんな時に、くじけそうな気持ちを支えるために諏訪の実家から贈られたのが彼、真っ赤な「トヨタS800」だったのだ。

彼の持ち主というのは、画家・原田泰治さんである。実家の両親が貯金をはたいて買ってくれた彼が原田さんを奮いたたせ、成功に至るまで支え続けた。幼い頃に小児麻痺のために足が不自由となった原田さんのため、足を伸ばしたまま運転できるし、腕でブレーキをかけるための特注のレバーも付いている。

彼は今もピカピカの状態のまま、諏訪湖畔の原田泰治美術館ロビーで佇んでいる。原田さんによっていかに大事にされ愛されたのか、誰が見ても一目でわかるはずだ。


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