煙草屋お婆ちゃん

タバコ自販機のすぐとなりに、おばあちゃんが座っているタバコ屋さんがあったとしたらどうするか。僕はとりあえず自販機にコインをいれるかもしれません。おばあちゃんと視線をあわせないようにしながら、するすると自販機に近づいて...

いや、勇気を出してあの売り台に向かうかな。そうすれば、おばあちゃんに「今日は蒸し暑いね〜」なんてちゃんとご挨拶して、「今日も頑張っていってらっしゃい〜」なんて笑顔付きの元気をいただくことが出来る。それがもし、自殺前の最後の一服の予定だったとしても、それで「はっ」と思い直して生きようとするかも知れない。いやーしかしなぁー。そんな想像も馬鹿馬鹿しくなるほど気ぜわしい今日。そもそも、おばあちゃんの座ってるタバコ屋さんを見かけないんだな。

最近ではたまにしか行かないデパート。店員さんの応対が、ばかに丁寧なものになってきているように感じる。満面の笑顔で近寄って来てくださるのはいいんだけれど「何かお探しですか?」と聞かれても困るんです。ただぶらぶらしているだけなので。百貨店業界の長引く経営不振から、店員さんも一生懸命なのだろう。でも、ホームセンターに慣れてしまった僕には、放っておかれて、店員さんを探し回るくらいで調度いいんです。せっかく優しくしてくれているのに、不調法ですみません。

それから、コンビニやファミレス、ハンバーガーショップの店員さんに共通しているのは、アンドロイドことば。(マニュアルに書かれたとおり、ロボットのように話すばか丁寧な言語)私はそういうところでのアルバイトの経験はないので、よくわからないのですが、おそらく新人研修の過程で、話すべき言葉や内容をすっかり刷り込まれて仕事につくからなのでしょう。丁寧語がぜんぜん丁寧語ではなく、愛想がぜんぜん無い笑顔になって、人間というよりも役者に近い存在ですね。これをおちょくる、悪いおじさんもいたりするので、やっている店員さん本人が一番大変だろうけど。

あれは、ディズニーランドあたりがその元祖かなぁ。とにかくアメリカというのはマニュアル社会で、組み立て工場での「ネジの締め方」だけで30ページのマニュアルがある(うそです)。だからディズニーランドで働いている、いろいろな方たちは本当にマニュアルどおりに、キャラクターに徹している(これはほんと)。実際に彼らはキャスト(役者)と呼ばれていましたよね。あなた「イッツ・ア・スモール・ワールド」の人形になれますよっていうくらい、笑顔がロボット化しています。

人間と人間のコミュニケーション自体が、ロボットの会話のようになっているんだ。そうなると、もともとはっきりと「ロボット」である自動販売機でタバコを買うことに、何も不思議はないってことだよね。むしろ心にもないお愛想を言われるよりも「おつりの取り忘れにご注意ください」程度に最小限の言葉をかけていただければ十分ってことかなあ。

Photo : 東京都たばこ商業協同組合連合会

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