ライバルと戦え

大鵬も柏戸がいたからこそ

日本ハム・斎藤佑樹投手の経済効果がすごい。

地元札幌での観客動員数増は当然のこと。さらになんと、キャンプ予定地である名護市のホテルが、すでに女性客の予約で埋まりつつある。ファームの練習場である千葉県の鎌ケ谷スタジアムまでが、チケット予約殺到。

斎藤投手。彼の強みは、その甘いマスクだけではない。田中大将君という好敵手がいることだ。ライバルとして、ドラマチックな戦いの予感を盛り上げる。ふたりの戦いはどうなるのか?プロ野球ファンならずとも目が離せない。斎藤投手のような、スターアスリート登場のかげには、常にライバル同士の死闘がある。相撲界の大鵬と柏戸。巨人軍の王と長島。フィギュア・スケートの浅田真央とキム・ヨナ。

あのビートルズが偉大になったのも、ジョン・レノンとポール・マッカートニーという、強力なライバルが争って作曲したから。デビュー当時のふたりは、大の親友であり、いつも互いを支え合う良きパートナーだった。だがしかし、いつかビートルズは巨大な存在となり、グループに対するプレッシャーが大きくなるにつれて、ふたりの関係は劇的に変わっていく。

一発アイデアマンであり、飽きっぽい性格のジョンよりも、音楽の職人で、粘り強いタイプのポールのほうが、グループの音楽をひっぱっていくリーダーとしてはふさわしかった。だからジョンは、次第にそのリーダーシップをポールに譲るようになる。しかしジョンは、そのことを受け入れていながらも、ビートルズが、甘く優美なポール楽曲に独占されていくのを、快くは思っていなかった。

その不満は、ヨーコという援軍を得て、ジョンのリベンジの形となった。ホワイトアルバムのレコーディングの途中で、突然あらわれたヨーコは、ジョンの理解者でもあり代弁者でもあったのだろう。スタジオにベッドを持ち込んで居座るという、なかば「前衛アート」のようなパフォーマンスは、実はジョン・レノン自身のストライキだったのかもしれない。

ジョンの先鋭的楽曲は、さらにその度合いをエスカレートしていく。次第に攻撃的で気まぐれで、理解不能となるジョンの作品。ポールは、露骨に不快感を表していたようだ。ホワイトアルバムの実験作「レヴォリューション・No9」や、アビーロードA面最後の「アイ・ウォント・ユー」後半のエンドレスリフレインなどがそうだ。僕も、はじめて聴いたときは頭がおかしくなりそうになった。レコードの溝がエンドレスになったかと思ったほどだ。

しかし、そんな軋轢や争いも、良い結果につながってしまうのがビートルズ。結局はこうした難解で実験的なジョンの楽曲は、その後ビートルズの芸術的側面を高め、その評価をあげていく。「アイ・ウォント・ユー」の最終的な仕上がりを聴いて、やはりポールは、ジョンへの敬愛をさらに新たにすることになった。ジョンは、あの曲の「ぶった切れポイント」を「絶対ここだ!」と叫んで決めたという。どういう感性をしているのか。

強力なライバルがいる人は幸運なのだ。ライバルと戦っているその時には、邪魔で目障りな存在だとしてもね。

負けずに戦いましょう!仲良くね。


12月22日、英政府はアビーロードを歴史遺産として登録したって。

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