35歳になるまでは目をつぶってね
35歳というのは人生の中での、ひとつの到達点かと思います。職場ではある程度のポジションを獲得。少しは人脈もできる。家族や家を持ち肩の荷も重くなる。自分に自信もつき、その一方でさらなる未来に不安も感じる。そんな年齢かと思います。
大学を卒業して10年くらい。
その10年くらいは、無我夢中でいいんじゃないですか。ある意味適当で。ある意味むちゃくちゃで。目の前に見えるとりあえずの目標に向かっていく。とりあえず知り合った人との縁を大切に支え合う。やれることからやっていく。出来ることから覚えていく。
面接官のおきまりの質問も悪い。「この会社でなにがやりたいのか」「10年後にはどんな仕事をしたいのか」とか聞かれるから、学生もそれを真に受ける。面接官としては、単にその受け答えの真剣さを見ているだけなのだが、学生はそれをまともに受けて考え込んでしまう。無理だろそんなの。10年後どんな仕事したいかって?
それ考えてたら暗くなるよ。誰だってウツになるよー。20代半ばから35歳なんて、大変に決まってますからね。まずは下積み。覚えることも沢山ある。叱られることなんか毎日。悔しいことやつらいことも。それが最初の10年間なんだからね。しかも、この不況のさなかに。
そんなことシミュレーションするなよって。「目をつぶっていけば」大丈夫だと思うよ。あまり先々のことを深く考えず。とりあえず目の前にいる大人を信用して。「やれ」って言われたことをやれば、それでいいんだ。
でも大学生の耳に、もはやこんなメッセージはとどかない。彼らの目前には就職戦線のひぶたが切られて、視界の晴れない中での長い戦いが始まってしまった。
今日もリクルートスーツの一群がせわしそうにバスに乗り込んでいった。もう少しゆっくりと、大学生活を堪能して、自分が納得するような研究に没頭してほしい。50歳を超えたおじいさん教師は、ワインを飲みながらこんなことを考えています。