ただいま消去させていただきました
ただいま焼き上がりました |
「ものは言いよう」ちょっとした言葉の使い方で、その印象は大きく変わる。「パイ焼けだぜー」と「パイ焼き上がりました」では、親近感や堅さが変わる。どちらがよいか悪いかは、その時の状況によるだろうけど、とにかく印象が変わる。
言葉づかいの善し悪しを感じるのは、脳のどのへんの部分なのだろうか。ロボットや音声認識装置にしてみたら、その違いを感じるのは大変なことだろう。なのに、僕たち人間は、ちょっとしたものの言い方で、喜んだり怒ったり、感情をかき立てられてしまうのだ。
一方で、国際的な舞台で失言したり、聴衆をがっかりさせるお話をしてしまう方もある。おそらく、その場の雰囲気があまりに失礼だったので、ムカっとしてしまったのだろうが、なんとも気の毒な結果となってしまったようだ。私がその立場にあっても、もしかすると、同じことをやってしまったのかもしれない。
「うるさい黙れ!」とどなるのと「おそれいりますが、静かに聞いていただけますか」と伺うのでは、相当に印象は違うことだろう。私自身もよく、学生さんを前にして「Å™C˜\⁄Z≠ª…m€≠Å≠«≠é≠È≠ç≠Ü≠ (=゚ω゚)ノ!」と声を荒らげることがある。後になって、よせばよかったと思っても後の祭りというもの。
日本に来ている留学生。日本語がうまくなったなー、と思って聞いていると、こんなセリフを語っている。「おめえちょうしこいてんじゃねーよ」「わーむっちゃやばいじゃん」こういうセリフに限って、あっという間に覚えてくる。
プログラムをしていると、デバック用の「トレース文」というものを挿入する。プログラムの動作を確認するために「ただいまAボタンが押された」とか「アヒルのインスタンスが消去された」とか、「三角関数が実行された」とか、目に見えない動作をフォローするのに必用なのだ。私なんか気が小さいので、あちこちにいれてプログラムが、「トレース文」だらけになる。
渋谷交差点での奇跡のようなトークを知って、気をつけるようにした。コンピュータだって、きれいな言葉を話したいだろう。特に、自分を生み出しているプログラマー本人に対しては。おもえば「HAL」が、ボーマン船長に対してつかっていた言葉も、とても丁寧できれいな言葉だった。いま、うちのコンピュータは、こんな言葉づかいのキャラクターになった。
「ただいまデータをすべて消去させていただきました」
うあー(=゚ω゚)ノ