宇宙の一部になります


八王子駅前にあるイタリア料理店で出してくれる「魚介スパゲッティ」は逸品です。糖質ダイエットを励行中であるはずの私は、本当は食べてはいけないものなのだけれども、この暑さのせいか、こういうものが食べたくなってしまいます。それに、八王子駅南口を見渡せるシチュエーションにある、このお店は、大学に通うスクールバスを待つのにも、最高のポイントなので、よく利用させていただいております。

おいしい食べ物をだまって食べてればいいものを、こうして水彩画にまでして描いてみると、ちょっと余計な考えも浮かんできます。このスパゲッティは、どのようにして私の身体の一部になってくれるのかしら。消化と吸収のプロセスについては、中学校でも勉強しましたし、以前に働いていた放送局で担当した科学番組でもずいぶんと取材しました。

わかってますよ。タンパク質と糖質と脂質になって吸収されるんです。これらは、私の身体の部品となったり、エネルギーとなったり。その場で使われたり蓄えられたり。でも本当におかしいですね。こうやって、「おいしいものを食べる」という行為で、私の身体が保たれている。別に「保とう」と思って食べているわけではなく、「食べたい」から食べているだけなのに。

このスパゲティをいただいたのは、もうかれこれ3週間ほど前のこと。だから、この絵に描かれた物質は、すべてすでに私の身体をすりぬけてどこかへ行ってしまった。おそらく先週までは、私の脳が「24時間テレビおもしろー」とか考えている間に、脳神経細胞をささえていたり。東京駅の階段を上るときに燃焼したりしていたのだろう。このイカとかハマグリ君たちは、もしかすると今もなお、私のお腹周りの脂肪の一部になってるのかしら。

これらの物質は、もうすでに私の身体を離れてどこかえ旅立とうとしている。スパゲティさん、こんにちは。そしてさようなら。宇宙のいとなみというものは、こうして永遠に続いていくということらしい。スパゲティの栄養も私という存在も、いつかは、何億光年も彼方の星の輝きの中で、なにか違う物質へと変化して、そしてまたいつか、この世界で一緒になるという。そういうばかばかしいような素晴らしいようなことを考えました。一皿のスパゲティについては、ちょっと考えすぎでしょう。まあ夏休みですから。こんなとこで。

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