AIにはできない(その2)
ネットフリックスのおかげで、スタンダードな映画はいつでも気軽に見られるようになりました。山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズなんかは、48作全部続けて見ることすらできるんです。
「男はつらいよ」第18作の「寅次郎恋歌」。寅次郎は旅先で義弟博の父、諏訪飈一郎(志村喬)と出会います。例によって酒の席で失敗したあとで、人間の生き方についてとくとくと教わるのです。
そこで飈一郎が寅次郎に語って聞かせるのは、なんとフローベールの姪が書き残した文章なのです。「リンドウの花がいっぱい咲いている庭で、農家の主婦が子供たちを叱りながらご飯を食べている。ご覧、あれが本当の人間だよ」フローベールが、姪にこう言ったのだそうです。
一体、誰がこんな脚本を書いたのでしょうか。
それは、山田洋次監督の共同脚家の浅間義隆さん。脚本に詰まった時に、山田監督が本当に頼りにしていた浅間さん。大変な勉強家、読書家なのです。「男はつらいよ」シリーズの随所に、可笑しみのあるエピソードやペーソス溢れたフレーズが登場するのは、博覧強記のこの方のおかげなのですね。
こんな芸当は、AIにはまずできないと思いますね。