二足のわらじ


スーパーマリオブラザーズのマリオは、なぜ配管工をやっているのかと、息子に聞いたところ、それは土管に潜ったり出たりする職業だからだという。でも、以前ドンキーゴングに出ていた頃は大工だったそうだ。

ということは、マリオは転職組ですか。今でも時々はドンキーゴングの仕事にも呼ばれることを考えると、むしろ配管工と大工の「二足のわらじ」というべきであろうか。

静謐で緊張感のあるミニマル音楽の作曲家、フィリップ・グラスの仕事ぶりについて、面白い記事を読んだ。彼は作曲家としての活動のかたわら、配管工としても働くのだという。配管工と現代作曲家の二足のわらじである。

ある日、注文先の食洗機を取り付ける作業に出かけた。その家はなんと音楽評論家ロバート・ヒューズ氏の家であった。自分の家で著名作曲家がスパナを持って働いているのを見て、ヒューズ氏は腰を抜かさんばかりに驚いたという。

常人には理解できないことだが、フィリップ・グラスにとって、本業の作曲に集中している時間以外に何をしていても問題ではないらしい。ニューヨークで作曲活動を始めたばかりの頃は、タクシードライバーをやっていた。

ほかにも沢山の芸術家たちが、小説や詩の執筆の合間に、税理士や地下鉄の車掌などの仕事をしていることが紹介されていた。芸術家といえば、ペントハウスにこもって創作三昧というイメージだが、それは間違っている。彼らは昼間は巷にあって仕事に没頭、夜には創作の海に漕ぎ出す。

彼らにとって、日常的な仕事とは想像の世界に浮かぶ自分をこの世に結びつけるアンカーポイントなのだ。そして、コミュニティへの参加によって得られる体験は、尽きせぬインスピレーションの源となるということだ。

これからの仕事観が変わりそうです。

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