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アリの多数決

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蟻と蟻 うなづきあひて 何か事 ありげに奔る 西へ東へ
橘 曙覧
蟻というものは、とびぬけて統制のとれた群行動をする動物だ。複雑な居住システムを完備した巣穴を、組織的な行動で作る。種類によっては、巣穴の温度調節まで行うそうだ。女王を守り、その子孫である卵や蛹を世話する。もちろん、食物を集めハンティングも統制のとれたグループ行動によって行う。
何年か前に、お台場の科学未来館を見学した際に、ミュージアム・ショップで、まさに「未来的」な「蟻の飼育セット」を購入した。NASAがスペースシャトル内での、蟻の飼育用に開発した特殊な土壌のはいった、透明ケースに、別容器にはいった生きた蟻が5匹ついててきた。そのNASA開発の土壌というのは、透明な水色をしたゼリー状のもので、それ自体が蟻のエサであるために、特別のエサやり不要という、いたれりつくせりの飼育セットである。
その飼育セットには、飼育観察のための解説書もついていた。そして、その解説書にはこんな気になることが書いてあったのだ。「蟻をケース内に放してみましょう、するとまず蟻たちは、どんな巣を作るか、ミーティングを始めることでしょう」
まさかね。
おそるおそる、別容器にはいっていた蟻たちを、水色の新居へと放してみた。しばらく息をつめて観察していたところ、驚くべき事に蟻たちは本当にミーティングを始めたのだ。上の写真のように、顔をつきあわせて、おそらくは30分ほどは、なにやら話し合いをしているように見えた。おたがいの触覚を触れあわせて、確かに何かの情報交換をしているように見えたのだ。

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アリの行軍

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アリの集団は、一個の個体はそれほど賢くなくて、その行動も単純なものだとしても、集団全体としては、恐ろしいほど複雑で高度な社会的行動を実現すると書いた。それは事実である。しかし、その逆にアリの集団全体が、アホらしい自滅的行動に追い込まれるケースについての記述を見つけたので採録させていただく。ジェームズ・スロウィッキー著/小高尚子訳「みんなの意見は案外正しい( The Wisdom of Crowds )」より。P.59 ____________________
二十世紀初頭、アメリカの生物学者ウィリアム・ビーブは、ガイアナのジャングルで奇妙な光景に出くわした。それは巨大な環状に動く兵隊アリの大群だった。アリ一匹が一周するのに二時間半かかる円周が360メートルはあろうかという環で、アリは二日間にわたってぐるぐるぐるぐる回り続け、最後には大半が死んでしまった。 ビーブが目撃したのは、兵隊アリが自分のコロニーに戻れなくなった状態である。兵隊アリは一度迷うと、自分の前のアリに続くという単純なルールに従う。その結果生まれた環は、たまたま何匹か違う方向に逸れて、ほかのアリもそれに続いた場合にしか終わらない。

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ロスアラモスのマニアック

ふと本棚から「ガモフ全集」を取り出してみた。この全集には、別巻として「現代物理科学の世界」上中下の3冊がついている。いままで気づかなかったが、この別巻3冊にも、ほかのガモフの著作同様しゃれたタイトルがついていた。" Matter, Earth, and Sky ” 「ものごと、地球、そして空」ね。まるで、いまどきの写真集のようなおもむきのタイトルですね。いいなあ、これ。
大学の帰り、眠い電車の中で拾い読みをはじめる。英語版オリジナルの出版は1958年とある。なんと私の生まれた年だ。第5章「電磁気学」に「電子計算機」という一段があり、そこに当時の最高クラスの電子計算機「マニアック」に関する記述を見つけた。
「たとえば、ロスアラモス研究所にある”マニアック”という名の古強者の計算機は、3,000本の真空管を持ち、10進法で12ケタの2つの数を約10万分の2秒で加えることができ、同様な数を1,000分の1秒以下で、掛けたり割ったりできる。こういう高速なので、電子計算機は、人間がやれば100人で100年かかる仕事を数日間でやることができる」
「ロスアラモスのマニアックは、彼の”数学の先生” S.ウラム氏からチェスの基本ルールを教えてもらって、”並の能力とすでに10局か20局の経験を持つ10歳の子どもと同様に”チェスを指すことができた。チェス指し用に特殊な設計をされた電子機械は、やがてはどんな世界選手権保持者をも負かすことができるようになると思われる。しかしウラム氏が著者に語ったところによれば、”電子計算機が人間のチェス名人を負かすようになるのは数十年先のことだろう”という」
実際に「電子計算機が人間のチェス名人を負かす」ことができたのは、1997年の5月のこと。この本が書かれてから約40年後だ。

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自動翻訳の不思議

引き続き「ガモフ全集・別冊1」より
「去る者日々に疎し」という文章を、電子計算機で自動翻訳した結果が面白い。 かなり昔のことだが、あるひとが行った実験。電子計算機の黎明期に、自動翻訳(英語→ロシア後→英語という翻訳)を試みた結果、以下のような深淵な答えが得られたという。 初期値:「去る者日々に疎し( Out of Sight, Out of Mind )」 最終値:「見えない気ちがい( Invisible Maniac )」
私は自動翻訳の専門家ではないので正しい実験はできないが、とりあえずもっとも手近なところでひとつやってみることにした。お世話になったのは「excite翻訳」というサイトである。 ____________________

まず英語から日本語へ。 " Out of Sight, Out of Mind "は、ちゃんと「去る者日々に疎し」になった。
それでは日本語から英語へ。 「去る者日々に疎し」は、” It is ignorant of the person date that leaves. ”となる。なるほど。英語では、こういうふうに言えばいいのか!意外と変わった言い回しだ。
よし、ではもういちど、英語から日本語へ。 あらら、” It is ignorant of the person date that leaves. ”は、” It is ignorant of the person date that leaves. ”のままだ。変換されないぞ。簡単すぎて翻訳拒否なのか、難しいのか。

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モラルハザード

先日、JDC(ジャパン・デジタルコンテンツ)信託の「信託免許取り消し」について感想を書いた。
その後、ある記事を思い出したぞ。10日前の9月7日日経朝刊に、ファンドマネージャーのモラルハザード行為についての解説が載っていた。これは、今回のJDC信託の件とは無関係ではある。しかし思い出したついでのメモとして、ならべて書いておきたい。ところで、こういうのはまさに「経済学的」な分析だなあ、と思いますね。
ファンドマネージャーは、顧客の資産を運営してそれが成功すれば、巨額の報酬を受け取ることができる。しかし逆に、損失を出したからと言って、それを補填する義務はない。何億円もの資金が失われたからといって、ファンドマネージャーが受ける罰は、せいぜい「解雇」くらいのものだ。自分が損失を引き受けることはないし、もし頼まれてもそれは出来ない相談だ。失われたんだから。
すなわち、ファンドマネージャーは、損失の大半を出資者に押しつける余地を持っている
出資者というものは、通常自分では、割高のものは購入しない。自分の持っている資金の価値に比べて「価値が割高の物件」を購入する理由は存在しない。別の言い方をすれば、損を承知の賭けはしないはずだ。
ところが、ファンドマネージャー側には、これをやる理由がある。危ない取引であっても、少しでも「価値がふくれあがる」可能性さえあれば、割高の物件を購入する理由はあるのだ。物件の価値が、万が一にでも膨れあがりさえすれば、その報酬は巨大だ。膨れあがらなかったら、負債だけ出資者に返せばいいのだ。「残念ながらダメでした」と一言添えるのを忘れずに。
「バブル」という経済用語は「資産価値のファンダメンタル価値からの乖離」を意味するそうだ。資産価値が、ファンダメンタル価値と比べて、大きく膨らんでも、小さく縮んでも、ファンドマネージャーにとっては「人ごと」で、出資者本人にとっては「自分のこと」。大きく膨らめば、両者に利益がある。小さくなった場合は後者のみが損害をこうむる。
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映画ファンドの仕組みと、一般ファンドのメカニズムとを比べてみよう。 言い換えれば、映画プロデューサーと、ファンドマネージャーの立場を比べてみることになるか。
出資者から資金を集め、それを「映画製作とその興行」につぎ込む。興行成績も良く、DVDの売り上げや、海外への販売が順調であれ…