いずれは無くなる

「企業に限らず、いっさいのものには寿命がある。今と同一の形態で永遠性を保つことはまずできない。そう考えておいたほうがいいのではないか」。

松下幸之助の言葉を集録した「社長になる人に知っておいてほしいこと」(PHP総合研究所・編)に、この、はっとするような表現を見つけました。松下電器の創始者である松下幸之助ご本人が、「そう考えておいた方がいいのではないか」と語っているのは、つまり松下電器とはいえ、「いずれは無くなるもの」としておいたほうがよいということだ。

いまのパナソニック社員が聞いたら、えらくがっかりしそうなものだ。でも実は、この言葉が表している考え方こそが、会社を長く維持するために重要なことなのではないか。

「いずれは滅びる」というこの考え方は、松下幸之助が、ある禅僧との対談の中で得心したもの。いずれすべてのものは無くなるというのは、仏教における「諸行無常」という考え方で、もっともあたりまえのこと。企業どころか、空に浮かぶ太陽も、宇宙も、仏教そのものも、いつかは消えてしまうのです。

だからといって、私たちの日々の暮らしが意味を持たなくなったり、仕事へのやる気をなくす必要はないですよ。むしろまるで、逆の教えなのです。

その教えとはこういうことです。すべてのものは昨日から今日へと変化している。日々すべてのものが新しくなっていく。だからこそ、毎日生き生きと生きてゆきなさい。そして、どんなに安定しているときも、固定的な価値観にとらわれてはいけないということ。企業で言えば、同じ戦略をいつまでも続けるといったことをしていてはいけない。恐れずに変化を求めよ。

日本の高度成長時代を支えた松下電器産業(現パナソニック)は、現在でも事実上、世界で最大級の事業体なのだそうです。1935年に創業とのことなので、あと四半世紀で100年企業となりますね。パナソニックは2010年3月期に2期連続の最終赤字となったということが、6月25日の株主総会で明らかになりました。

日本の家電メーカーすべてが厳しい家電不況に悩む中、当然のことかもしれない。しかしこういう状況でも、パナソニックには、特別な存在として元気でいてもらいたいものだ。松下幸之助氏の言葉を読んで、そう思う。

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