強欲は合法だ
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世界中のトレーダーが、映画「ウォール街(1987)」に登場したこのカルト・キャラに強く共感した。ゲッコーの生き様は、その話し方からファッションまで、彼ら金融街の男達の手本となった。日本でも、ゲッコーの生まれ変わりみたいな有名人が出現した。
「皮肉なものだ」と、ゲッコー役のマイケル・ダグラスは言う。
ゲッコーとは、憎むべき悪役だったはず。主人公、バド・フォックス(チャーリー・シーン)親子を罠におとしいれ、金を儲ける。しかし映画を見た人は、なぜかこの悪玉キャラのほうに惹かれた。手段を選ばず敵を葬る。弱肉強食の世界を生き抜く守銭奴。「金と力」を信じて生きる彼こそが、現代のヒーローだった。
23年ぶりの続編「ウォールストリート / Money Never Sleeps」を見た。
前作でのインサイダー取引の罪で、7年の刑役を終えて、深い悟りと新しい人生観を得たゲッコー。(前作の罪で刑務所から出てくるっていう設定、斬新だな〜。)よりミステリアスになった彼の行動パターンが、彼の人生の最終章を彩る。果たして彼は、罪を悔い改めた救済者なのか?それとも不死身の悪党なのか?
金と人生、仕事と家族、他人と自分。いくつもの価値観が、複雑に混じり合う中で、ゲッコーと渡り合う主人公ジェイクの運命は? このへんが続編の見どころ。観客はドキドキものですね。でも大丈夫。ゲッコーの金儲けの辣腕ぶりに、変わりはありません。彼に迷いは無い!マネーゲームとは彼の人生そのものだからさ。
今回の、ゲッコーの決めゼリフは「強欲は合法だ( Greed is Legal )」です。
どうですか、また真似してみますか?
続編の舞台は、金融危機にはまりこんだウォール街。新たなる敵役、ブレトン (ジョシュ・ブローリン)は、栄華を極めた末に、金融危機の裂け目へと転落して行く。彼は、ヘッジ(危険を回避)することが出来なかっただけさ。どうせ、もともとウォール街は「暴走と崩落」を繰り返しているんだからね。逃げ遅れるやつが悪いんだって。
2008年、世界を揺さぶったリーマンショック。破綻の前には、どの証券会社も投資銀行もサブプライムローンや、CDOなどのリスキーな金融商品を世界中に売りまくっていた。もともと信用性の低い借り手に貸したお金をもとにしているのだから、危ないに決まっているのに、それを格付け会社が保証していた。
今年の5月31日、米格付け会社ムーディーズは、日本のソブリン格付け「AA2」を引き下げ方向で見直すと発表。東日本大震災による、日本経済の立ち直りの遅れを懸念してとのことだ。なんだってこんな時に。ひどいやつら。
ヨーロッパでは、ギリシャが財政危機の瀬戸際にある。6月17日、独仏首相がギリシャ債務危機への援助姿勢を示した。さっそくダウ工業株30種平均は110ドル上昇した。しかし結局は42ドル高で伸び悩み。なぜかというと、同じ日にムーディーズが、イタリア国債を「格下げ方向で見直す」と発表したからです。まるでモグラたたき。さて、現代の若きゲッコーたちは、世界のどこに照準を合わせているのでしょうか。
明日の朝。世界の金融市場でふたたび、生き残りを掛けた死闘がはじまる。