世紀の奇人

トマス・エドワード・ロレンス。この方も世紀の奇人のひとりと言われているようです。アインシュタイン同様、wikipediaにある「奇人コーナー」に分類されている。

ロレンスさんといえば、デビッド・リーン監督の名作映画「アラビアのロレンス」のモデルとなった方。私にとっては、スクリーン上の憧れの人。ロレンス役のピーター・オトゥールがかっこ良かったもの。ところでこの人、なんで「奇人」に分類されているのだろうか?

「アラビアのロレンス」を観ても、確かに十分に「変わった人」ではあります。そもそも映画の冒頭、ひとことのセリフも言わずにバイク事故で死んじゃう。変わった登場のしかただ。ただの中尉なのに、将校達が出入りするラウンジのビリヤード台にいたずら。「権力嫌い」の変な人ですね。マッチの火を指でつかんで消す。「無謀な行動家」なんですね。「イギリス人なのに砂漠が大好き」で、その理由も「清潔だから」という。「変わったユーモアのセンス」の持ち主なのですね。

でも、ロレンスが「人と違う何か」を持っていたとしたら、おそらくそれは「並はずれた勇気」だろう。並のイギリス人には、思いもつかなかった作戦を立案して実行する。それによって、第一次世界大戦の戦況を一変させ、世界史を書き変えてしまった。中東における、オスマン・トルコの圧倒的な支配体制を崩して、イギリスの影響力を伸張させた。こうした功績(☆1)を達成できたのは、彼が「変人」で「勇気ある人」だったから。

彼は「異文化を知る人」でもあった。学生時代から考古学に熱中。独自の行動力と語学力とを駆使してヨーロッパや中東各地を旅する。軍の依頼を受けて、中東の調査の際も、オスマン・トルコと戦うゲリラ兵を率いることなんて考えてもいなかったことだろう。しかし、ファイサル王子と出会い、アラブ世界に生きる人々の心に触れるうちに、彼の中の「闘う人」が目覚めていく。

ロレンスが残した「知恵の七柱」は、近代における重要な歴史書であり、アラブ世界に関する啓蒙書でもある。彼が出会った人物に対する冷徹な観察が見事。アラブ文化を理解するための知恵に溢れた傑作だ。イギリス人のくせに、アラブのことが分かる。アラブ世界に共感することが出来る。そして「勇気」と「行動力」が、彼をして「アラビアのロレンス」とした。しかし、平均的イギリス人にとっては、彼はやはり「奇人」であり、彼の行動は「奇行」として映ったことだろう。

ロレンスの心にあったのは、異邦人に対する「心の共振」だ。映画「ダンス・ウィズ・ウルブス」で描かれていた、心や優しき兵士、ジョン・ダンバー中尉。彼もやはり、異邦人であるインディアンの心に触れて感動し、インディアンそのものになってしまった。当時の白人から見れば変な白人。異文化を理解し、異邦人と触れ合う心や優しき人なのに、そういう人はなぜか「変人奇人」として、退けられてしまう。「アラビアのロレンス」と同じテーマかもしれない。異文化を理解する人は「奇人」だという偏見。

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☆1:ロレンスの死後、オスマン帝国はトルコ民族国家のトルコ共和国となり、エジプト、シリア、イラク、アラビア半島、マグリブを放棄せざるを得なくなった。そしてこれらの地域は、西欧諸国の植民地となった後、西欧諸国によって独立を果たすが、現在に至るまで政治的混乱が続いている。( wikipedia T.E.ロレンスの項より、一部引用 )

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