大きなやかん



甲子園シーズンが近づいた。各チームでスローガンを掲げていて、仙台育英などでは「大機大用」と言う難しい言葉を使っている。野球では「大きなチャンスを大きく活かす」あるいは「チャンスが来たならばしっかり工夫してそれを活かそう」という意味で使われているようだ。

本来は仏教用語で「大乗の教えを受けてそれを実践する資質」のこと。一度このブログでも書いたが、柳生宗矩が残した「兵法家伝書」の「無刀の巻」でも解説されている。それによれば「大機大用」の意味とは以下のようになるのだが、読んでもなかなかわからない。

人間も内に構えた「機」があるためにそれが外へ現れる。外に現れたものを「用」というのである。内に蓄えた「機」が大きければ大きいほど、外にでる「用」も大きくなる。

最近、これを簡単に説明しているのではないか、と思える「ある落語」に出会った。桂枝雀落語大全・第十一集収録の「ちしゃ医者」である。

この医者にかかったら、治るべき患者ですら命が危ないという、超ヤブ医者の話。主人であるこのヤブ医者について、従者の久がこんなことを言う。

「しかし、(うちの先生は)人間は大きいね。確かに大きいね。うん、人間ちゅうものは何やね、大きなやかんに水を入れてそれが沸くんやね。だからちっちゃいやかんすぐ沸くけどね、大きなやかんに水入れてもなかなか沸かん。そのかわり沸いたらものすごい力でるっちゅうこと言うけどね」

一旦沸いたらすごいことになるが、大きいやかんは沸くのに時間がかかる。

ところで、この落語はこう続いていく...

「終生沸かん場合もあるそうなけどな」
「うちの先生やみなそれに近いように思うけどね」

あ、そうですか
終生沸かない、ということもありますか。
こう言われるとまあ、気も楽になりますね。


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☆水彩画は、仏教の国タイ
バンコックに保存されている「ジム・トンプソンの家」


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