アリス・クーパー


まだケヤキの葉が新緑に輝いていたころだから、この絵を描いたのは初夏だろう。こんな回廊の画像を見ていると、トンネルの向こうに不思議な景色が見えてくる。

1980年代のある日、まだ売り出し中の新米ロッカーだったアリス・クーパーは、長いトンネルの向こうに広がる、コンサート会場の景色を見ていた。彼がもぐりこんでいるのは、巨大な大砲の砲身の中である。ド派手な演出が売り物のグラム・ロックのコンサート。明日の本番では大砲の先から観客めがけて発射される予定なのだ。彼は恐怖のあまり冷や汗をかきながらトンネルの先を見つめていた。

幸い、スタントマンによるテストが何回やってもうまくいかず、この演出プランはボツとなり、アリス・クーパーは危険に身をさらすことなくコンサートを終えた。(かわりに大砲に乗っかって歌ったのだがこれが大受け)

デビッド・ボウイが亡くなってしまい、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞。かつてのプロテストソングはいま、新しい時代の価値観で受け入れられようとしている。アリス・クーパー。もう一度、彼の勇姿を見てみたい。ディランのように今を歌うとしたら、彼はどんな詩を披露してくれるだろうか。


Popular posts in Avokadia

レイチェル・リンド

九方皐

清水次郎長