アニー・ホール

ウッディ・アレンの最高作品だと言われている「アニー・ホール」。男女の人間関係を、とても複雑で繊細なものとして描いたこの映画には、笑えてうなずけるエピソードが満載。男も馬鹿だし女性の心もわがままなもんだね。でも男の馬鹿さ加減は際だっているな。

男女関係というものは、けして情熱的でストレートなものなんかじゃなく、紆余曲折があって複雑でわけのわからないものだ。それまでのラブストーリー映画は作り物ですよ。(映画はみな作り物だけど)この映画を見て「まあ人生こんなもんだ」と笑って安心した方も多いのではないだろうか。

主人公アルヴィ・シンガーは、とにかく極度の心配性。些細なことにこだわってそれで自滅する。「これじゃだめだだめだ」「これはまずい」と理屈をこねながら、自分のまわりの人間関係も壊していく。まさに教養が邪魔して人生がうまくいかない。このアルヴィの子ども時代のエピソードがまた、いかしてます。

あまりに無気力な子どもなので、連れてこられたカウンセリング室。まさに俗物そのもののオヤジ先生と、猛烈な母親にはさまれて、小学生アルヴィがつぶやく。

「宇宙は膨張しているんだ。だからいつか人類は滅びちゃう。僕たちに生きる意味はないんだ」

ハッブルが宇宙は常に膨張しているということを発見して、アインシュタインがそれを証明してしまいました。それを聞いたら、純真な小学生は心配するよなあ。この世界は、フーセンのように膨らんでいつかは「ぱちん」とはじけ飛んでしまう。「坊や、それはまだ何千億年もさきのことなんだぜ。まあ俺たちは、せいぜい人生を楽しもうじゃないか」と、オヤジ臭ぷんぷんのカウンセラー先生に言われても、アルヴィの心は晴れない。そりゃ晴れないよなあ。あんたみたいになりたくないし。

西洋の科学は宇宙を解明してきた。でも、ひとりの少年の心を納得させて、人生を楽に生きるための教えとなる理論は、まだ生み出せていないようだ。

ところで、この映画のタイトル。もちろんダイアン・キートン演じる売れない歌手の名前なんだけど、どうしてこの名前なのか。ダイアン・キートンの実名が「ダイアン・ホール」で、彼女のニックネームが「アニー」だからとか。IMDBのユーザー・レビューのどこかに書いてあったんだけど、本当ですかね。

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