グーグル頭脳流出
グーグルを今月4日に退社した、大物技術者、李開復(カイフー・リー)氏は、第二のジョブスになるのか?
李氏は、もともとマイクロソフト社の副社長だったのを、グーグルが2005年に無理矢理引き抜いたという経緯もある。こうして4年で退社となった流れを考えれば、グーグル内部に何か問題があるのではないかとも勘ぐりたくなる。各紙紙面の内容も、グーグルにおける企業内統治に欠陥ありとの論調のものが多い。
李氏以外にも、グーグルではこの1〜2年の間、人材流出が止まらない。以前も引用したが、本社・広報幹部のティム・アームストロング氏は、AOLへと引き抜かれた。世界最大のSNS「フェースブック」は、幹部から末端まで、グーグル出身者がたくさんいる。ツィッターの創業者も同様にグーグルからの人材が流入しているようだ。
きわめて短期間に急成長を遂げてきたグーグルは、他のIT巨大企業の例と同じように、早くも衰退への道を転がり始めたのだろうか?こうした人材の連鎖反応的な流出は、マイクロソフト社でも見られた現象であり、同社におけるその後の開発力の低下や、企業ビジョンの不明瞭化の原因になったことは否めない。まるで、その領土拡大を際限なく続けるローマ帝国のように、グーグルはYouTubeを買収し、Bloggerを買い取り、さまざまなIT物件を買収しては、企業規模の拡大を重ねてきた。
領主の欲望のままに拡大された領土は、果てしなく続く国境線という防衛ラインで囲まれる。領土の守備は、防衛ラインが伸びれば伸びるほど難しくなる。無敵のローマ騎馬兵軍団をひきいての、適地略奪は簡単だ。しかし、手にした領土の守備は、いつかは金銭と食料の空費をまねく。グーグルもいつしか、領土の略奪者から、防衛に心を悩ませる巨大な領主へと変貌してしまったのかもしれない。
9/14・日経朝刊の記事では、グーグル人材流出の原因を、巨大化した企業の「成長の鈍化」と指摘する。企業の新規上場における上場益こそが、ストック・オプションを莫大な富に蛙チャンスであって、その後「もう急上昇はしない」株を保有し続ける理由は薄れる。彼らグーグルを支えた人材たちは「安定成長の中のグーグルによる世界革命」に参加することよりも、「次の新興企業でのギャンブルと爆発的な上場益」を得ることのほうが魅力的である。
情報源の定かでない記事で、5日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(オンライン版)は、9月5日李開復氏は、8億元(約109億円)規模のプライベートエクイティ(PE、未公開株)ベンチャー企業を立ち上げる可能性があると報じた。
日経朝刊(9/14)「ニュースに見る一週間」