アイラ島のボウモア18年

ボウモアの港

仙台から高校の同級生のE教授が上京してきた。そうだな、彼と僕との共通点といえば、高校の卓球部で、いつもラリーの練習をしていて、同じ頃に辞めたことかな。専門領域も学力レベルもまるで違うのだ。僕は放送局出身のエンタメ系。彼はいまや日本の物理学を背負って立つくらいの先端的研究者。

彼の研究は先日の日経サイエンスでも紹介されていて、海外の科学誌にも掲載されている。そういう世界的レベルの方。せっかくそういう本人が目の前にいても、研究の内容について、僕は理解するどころか、質問することすら出来ない。歯がゆい。

量子力学とかレーザーとかについて、なんとか、たとえ話でもいいから理解したいものだと思う。でもそれやはり無理なのだ。アインシュタインが、相対性理論について、新聞記者から「シロウトにも分かるように説明して」と頼まれて、「絶対ムリ」と断った話は有名だもんね。

ということで、科学ジャーナリストのようなインタビューは諦めて、帰りの特急までの時間、東京ステーションホテルのバーで一献傾けることにした。僕がいただいたのは、イギリスのアイラ島で蒸留された、シングルモルト「ボウモアの18年」です。アイラ島の女王といわれているらしい。ちなみに彼は「アードベック」を飲みました。

村上春樹さんの旅行記的随筆集で「もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)」という本がある。村上さん本人がアイラ島でモルトウイスキーを飲み比べして歩いた日々を綴っている。

もしも僕らのことばがウイスキーであったならば。答えはこういうこと。僕らはいつでも、お互いを深く理解し合うことが出来るのです。昨晩もそういうことを証明されました。アイラ島の、ウイスキーの神様に感謝します。


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