あなたには失望しました
こんなようなセリフを面と向かって言われたことありますか。私、なんぼでもありますよ。テレビ局の中で、スタジオセットをこさえたり、CG映像なんぞ作ったり、何年もやっていてですね、毎回「素晴らしいお仕事有り難うございました」ばっかり言ってもらえるはずがないではありませんか。
10回の仕事のうちに一回くらいは、誰でもはずすことあるでしょう。「失望しました」と言われる、というのは別に、政治家の方々だけのご専門ではないのです。私ごとき下っ端でも、デザイナーなどという仕事をしていたら、日常いつでも起こりえること。いわば職業上のコミュニケーションの一部なのです。
と、偉そうには言うものの、実際のところは中傷を言われると、本当はかなりこたえます。叱られると随分と落ち込むほうなのです。「失望した」とまでは言われなくとも「まあまあでしたね」とか、「次回はもうちょっといいものを」とか言われただけで、くじけます。
がっくりくるようなことを言われた経験の中で、いまも忘れられないのは、オーストラリアのシドニーでのプロダクションオフィスでのこと。デスクに向かっている私に、部屋にはいってきた女性プロデューサーが、やにわにこう言いました。
「カズオ! あんたには本当に失望したわ」
英語ですから、実際はこうなります。「Kazuo! You disappointed me so much.」そうです。最近アメリカのほうから聞こえてきた、あのメッセージのあの感じです。しかも受動態で言われると、これは答えます。「全くもって悪いのは、私を失望させたあんたのほうだ」みたいなニュアンスで、完全にこっちが悪いみたいに思わざるを得ない。
それほどのことを言われなければならなかったとは、一体全体、私は一体何をしでかしたというのでしょうか?