ただいま消去させていただきました

ただいま焼き上がりました

「ものは言いよう」ちょっとした言葉の使い方で、その印象は大きく変わる。「パイ焼けだぜー」と「パイ焼き上がりました」では、親近感や堅さが変わる。どちらがよいか悪いかは、その時の状況によるだろうけど、とにかく印象が変わる。

言葉づかいの善し悪しを感じるのは、脳のどのへんの部分なのだろうか。ロボットや音声認識装置にしてみたら、その違いを感じるのは大変なことだろう。なのに、僕たち人間は、ちょっとしたものの言い方で、喜んだり怒ったり、感情をかき立てられてしまうのだ。

先日の対オーストラリア代表戦の後の渋谷駅交差点。ともすると興奮してトラブルを引き起こしそうな群衆をうまいことなだめた、交通機動隊のかたの、マイルドトークが話題となった。DJポリスとか呼ばれていますが、この方は、群衆となった人々が持つ「言葉への感受性」をよくよく研究して、あの日のトークに生かしたのだろう。暴動も起きず、みながハッピーな気持ちで帰宅できたのも、あの配慮の言葉のおかげだった。

一方で、国際的な舞台で失言したり、聴衆をがっかりさせるお話をしてしまう方もある。おそらく、その場の雰囲気があまりに失礼だったので、ムカっとしてしまったのだろうが、なんとも気の毒な結果となってしまったようだ。私がその立場にあっても、もしかすると、同じことをやってしまったのかもしれない。

「うるさい黙れ!」とどなるのと「おそれいりますが、静かに聞いていただけますか」と伺うのでは、相当に印象は違うことだろう。私自身もよく、学生さんを前にして「Å™C˜\⁄Z≠ª…m€≠Å≠«≠é≠È≠ç≠Ü≠ (=゚ω゚)ノ!」と声を荒らげることがある。後になって、よせばよかったと思っても後の祭りというもの。

日本に来ている留学生。日本語がうまくなったなー、と思って聞いていると、こんなセリフを語っている。「おめえちょうしこいてんじゃねーよ」「わーむっちゃやばいじゃん」こういうセリフに限って、あっという間に覚えてくる。

プログラムをしていると、デバック用の「トレース文」というものを挿入する。プログラムの動作を確認するために「ただいまAボタンが押された」とか「アヒルのインスタンスが消去された」とか、「三角関数が実行された」とか、目に見えない動作をフォローするのに必用なのだ。私なんか気が小さいので、あちこちにいれてプログラムが、「トレース文」だらけになる。

渋谷交差点での奇跡のようなトークを知って、気をつけるようにした。コンピュータだって、きれいな言葉を話したいだろう。特に、自分を生み出しているプログラマー本人に対しては。おもえば「HAL」が、ボーマン船長に対してつかっていた言葉も、とても丁寧できれいな言葉だった。いま、うちのコンピュータは、こんな言葉づかいのキャラクターになった。

「ただいまデータをすべて消去させていただきました」

うあー(=゚ω゚)ノ


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