手作業というものはなくなるの?

ブルーノ・タウトによるガラスのつみき

葛飾柴又の帝釈天題経寺。映画「男はつらいよ」の舞台となった柴又のシンボルです。正月などはいまも沢山の参詣客で賑わうスポットになっております。この帝釈天の本堂は、建物の外側がすべて、素晴らしいレリーフ木彫に覆われていています。手仕事による彫刻の美しさ。 近くで見るとその精緻な立体表現に驚嘆します。(☆1)

さきごろより、3Dプリンターというものが流行中。コンピュータで作った三次元モデルの形状をそのまま立体にすることができる。複雑な形状を計測したり、作り出すことができる。建築や自動車産業はもちろん、医療への応用も期待されています。芸術分野も有望で、3Dアート作品というものもどんどん生まれるでしょう。

僕たちの次の世代の「ものづくり」。一体どうなるのだろうか。まさかとは思いますが、誰も手彫りの彫刻なんかできなくなる? 3Dプリンターの普及によって手作業での「ものづくり」が減るなんてことにはならないでしょうね。

何十年か後に、もし柴又題経寺で彫刻の改修が必用になったときにどうするのかしら。3Dスキャナーで現状をスキャンして置いて、後で3Dプリンタで出力。外壁にそれを取り付けておしまい! そんなことにならないだろうか。余計な心配をしています。

大学での授業で、紙に鉛筆で「絵を描く」課題を出すと、学生の皆さんはすでに「手作業」による表現が不得意、あるいは嫌い、だということがわかります。キーボードとタッチパネルの世代になったのですね。最近はトイレだったすべてがタッチパネルに統合されているし。

直接手を動かして考える。スケッチを描きながら考えるって大事なんですけどね。アイデアを生み出す課程で、「手作業」というのはとても大事だよ。ぐるぐると手を動かす中で生まれてくるんだから。大学では意地でも「手作業」というものの価値をお伝えしなければね。何十年か後に、日本から生まれるミケランジェロ君のために。

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☆1:葛飾柴又HP
寅さんゆかりのツアーとしても、ぜひ一度お訪ねください。

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