ヤノマミと精霊

オカッパ頭の「ヤノマミ族」の男が、カメラに向かってつぶやいている。「ナプを殺すか〜殺さないか〜。どうするか〜」。

NHKスペシャルの映像。これを見ている限りでは、なんだか鼻歌を歌っているようでもあるけれど、実は恐ろしいことを、精霊と相談しているところ。「ナプ」というのは、彼らの言葉で文明人のこと。つまり、彼の目の前で撮影をしている、NHKのカメラマン、菅井禎亮さんのことを「殺そうか〜」と言っているのだ。

ソニーのHC-7 というHDDハンディカムで撮っているそうなので、目立ちはしないだろうけれど、なんと自分を「殺そうか〜殺すまいか〜」とぶつぶつつぶやいているこの男のアップショットを撮り続けている。菅井さんは、この男の言っている内容を知らなかったのかも。隣にいたポルトガル人の通訳は、この時、全部は訳さなかったとのことだから。しかし、まさに命がけの取材だったようだ。

ヤノマミ族の人たちは、よく精霊たちと交流しようとする。鼻にむけて、幻覚剤になる葉っぱの煙を吹きかけながら、しだいにトランス状態となって、精霊と話しをするのだ。菅井カメラマンの前に立ちはだかった、この男の鼻も、幻覚剤の煙を浴びて真っ黒だ。

この一族の中で、一番霊的レベルの高いシャーマン、というおじいさんも番組で紹介された。彼は、たった一度だけ、取材クルーに向かって話をしてくれたそうだ。その内容は、生命の「輪廻」に関するものだった。「人間は死ぬと、空の精霊になる。現実での死は死ではないのだ。しかし空の精霊もいつかは死ぬ。そして大地に降りて来て虫になる。虫はいずれ大地に食べられる」。こういう内容だった。どこかお釈迦様の教えに、近いものがあると思った。彼ら「ヤノマミ族」の考えていることは、精神的にとてもレベルが高いのではないだろうか。

ところで精霊と言えば、水木しげるさん。
水木しげるサンの迷言366日(幻冬舎)」の、3月19日の項に、ニューギニアの人々の霊的能力について、こう書いてある。以下、引用させていただく。

「われわれには何も感じられないが、ニューギニアの森の人々は、そういう妖怪感度が高いのだろう。彼らの文化水準が低いから感じるのではない。むしろわれわれよりも、霊的文化が高い。
そういう意味で、いわゆる文明人なるものは霊的バカが多いのだ。
すなわち感度が悪いためにニブイのだ」。

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