アルゴリズム取引
「アルゴリズム行進」は誰もが大好き。NHKの人気番組「ピタゴラスィッチ」[*1]のメニューの中では「ピタゴラ装置」と人気を二分する大人気コンテンツですね。
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[ アルゴリズム行進(歌詞 抜粋) ]
一歩進んで前ならえ
一歩進んで偉い人
ひっくりかえってぺこりんこ
横に歩いてきょろきょろ
ちょっとここらで平泳ぎ
ちょっとしゃがんで栗拾い
空気入れます しゅー しゅー
空気が入って ぴゅー ぴゅー
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ところで、この「アルゴリズム」というもの、今回の金融パニックで取りざたされています。「アルゴリズム取引」と言われる、コンピュータによる自動取引システムが、あまりにもすばやく、あまりにも過剰に繰り返し反応したために、株式の急激な下落を引き起こしたと言われているのです。一瞬の判断が命取りになる、金融トレーダーの世界。人間の判断では、瞬間的な局面に追いつけずにミスを犯してしまうため、コンピューターが常に、異常な値動きなどがないか、見張っているのだそうです。
今回の株式下落では、どうもそれがうまくいかなかったみたいです。「アルゴリズム」の立場から言えば「言われたとおりにやっただけ」ということ。でも、人間ならば「なんかやばいぞ」ととっさに取引から身を引くところが、アルゴリズムには分からない。「売り局面で売る」のは当然なのですから、世界中の「アルゴリズム取引」は、売りに売りまくったようです。その結果、ニューヨーク証券取引場での、20分間で1000ドル近い下げが起きたのではないかと言われています。人間が「おいおいおい」なんて、びびっている間にも、どんどん取引を進めていってしまう。
前述のアルゴリズム体操も、子供ではなく、大人がそろってやっているところが面白いんです。「一歩進んで前ならえ」なんて言っているうちに、目の前に落とし穴があっても、全員そろって突進していってしまいそう。そういう「危ないロボット集団」みたいな動きが、とても面白いのだと思います。
「アルゴリズム」は最初に人間が決めたとおりにしか動かない。当然です。世界で最も有名なコンピュータ、映画「2001年宇宙の旅」のHAL 9000。世界最高のコンピュータのはずなのに、人間の言ういい加減で矛盾した指示が理解できずに、結局狂ってしまいました。宇宙船の乗組員を皆殺しにしようとしたんですよー。こわいですよね。
映画と現実をごっちゃにしてはいけないのだけれども、直感的に思うのは「アルゴリズムに世界金融をまかせて本当に大丈夫なのか?」ということ。どんな天才がプログラムしたアルゴリズムだって、どっかに欠陥がないとは限らない。上で拝借したフローチャートも、最下段の命令が "Buy new lamp"になっているけれど、今なら "Fix the lamp"というべきでしょ?
ブラック・ショールズ方程式などの理論によって、金融工学の旗手となったマイロン・ショールズという経済学の先生がいます。彼は1997年にその功績でノーベル経済学賞を受賞しました。でもその翌年には、彼が経営する巨大ヘッジファンドLTCMは、空前の損失を出して倒産。さらに2008年、新たに設立したプラチナム・グローブ・コンティンジェント・マスター・ファンドでも、一年間に38%の損失を出して運用停止となってしまいました。
ショールズ先生ですらこうです。並みのプログラマーが書いたような「アルゴリズム」に、世界金融の売り買いをやらせるのは、やめてほしいな〜。
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[*1]「ピタゴラスィッチ」のコンテンツの核心部分を担っているのは、東京芸術大学大学院映像研究科教授の佐藤雅彦さん。電通のクリエイター時代から天才だと思っていたのですが、佐藤雅彦さんは、NHKのこの番組でも、偉才ぶりをいかんなく発揮されていますね。私は「アルゴリズム行進」だけでなく「おとうさんスィッチ」も大好きです。
( diagram : wikimedia commons by Booyabazooka )
アルゴリズムのせいです >>>
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[ アルゴリズム行進(歌詞 抜粋) ]
一歩進んで前ならえ
一歩進んで偉い人
ひっくりかえってぺこりんこ
横に歩いてきょろきょろ
ちょっとここらで平泳ぎ
ちょっとしゃがんで栗拾い
空気入れます しゅー しゅー
空気が入って ぴゅー ぴゅー
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ところで、この「アルゴリズム」というもの、今回の金融パニックで取りざたされています。「アルゴリズム取引」と言われる、コンピュータによる自動取引システムが、あまりにもすばやく、あまりにも過剰に繰り返し反応したために、株式の急激な下落を引き起こしたと言われているのです。一瞬の判断が命取りになる、金融トレーダーの世界。人間の判断では、瞬間的な局面に追いつけずにミスを犯してしまうため、コンピューターが常に、異常な値動きなどがないか、見張っているのだそうです。
今回の株式下落では、どうもそれがうまくいかなかったみたいです。「アルゴリズム」の立場から言えば「言われたとおりにやっただけ」ということ。でも、人間ならば「なんかやばいぞ」ととっさに取引から身を引くところが、アルゴリズムには分からない。「売り局面で売る」のは当然なのですから、世界中の「アルゴリズム取引」は、売りに売りまくったようです。その結果、ニューヨーク証券取引場での、20分間で1000ドル近い下げが起きたのではないかと言われています。人間が「おいおいおい」なんて、びびっている間にも、どんどん取引を進めていってしまう。
前述のアルゴリズム体操も、子供ではなく、大人がそろってやっているところが面白いんです。「一歩進んで前ならえ」なんて言っているうちに、目の前に落とし穴があっても、全員そろって突進していってしまいそう。そういう「危ないロボット集団」みたいな動きが、とても面白いのだと思います。
「アルゴリズム」は最初に人間が決めたとおりにしか動かない。当然です。世界で最も有名なコンピュータ、映画「2001年宇宙の旅」のHAL 9000。世界最高のコンピュータのはずなのに、人間の言ういい加減で矛盾した指示が理解できずに、結局狂ってしまいました。宇宙船の乗組員を皆殺しにしようとしたんですよー。こわいですよね。
映画と現実をごっちゃにしてはいけないのだけれども、直感的に思うのは「アルゴリズムに世界金融をまかせて本当に大丈夫なのか?」ということ。どんな天才がプログラムしたアルゴリズムだって、どっかに欠陥がないとは限らない。上で拝借したフローチャートも、最下段の命令が "Buy new lamp"になっているけれど、今なら "Fix the lamp"というべきでしょ?
ブラック・ショールズ方程式などの理論によって、金融工学の旗手となったマイロン・ショールズという経済学の先生がいます。彼は1997年にその功績でノーベル経済学賞を受賞しました。でもその翌年には、彼が経営する巨大ヘッジファンドLTCMは、空前の損失を出して倒産。さらに2008年、新たに設立したプラチナム・グローブ・コンティンジェント・マスター・ファンドでも、一年間に38%の損失を出して運用停止となってしまいました。
ショールズ先生ですらこうです。並みのプログラマーが書いたような「アルゴリズム」に、世界金融の売り買いをやらせるのは、やめてほしいな〜。
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[*1]「ピタゴラスィッチ」のコンテンツの核心部分を担っているのは、東京芸術大学大学院映像研究科教授の佐藤雅彦さん。電通のクリエイター時代から天才だと思っていたのですが、佐藤雅彦さんは、NHKのこの番組でも、偉才ぶりをいかんなく発揮されていますね。私は「アルゴリズム行進」だけでなく「おとうさんスィッチ」も大好きです。
( diagram : wikimedia commons by Booyabazooka )
アルゴリズムのせいです >>>