答えの出ない問題

考えても答えの出ないものはある。しかし、志のある人は、歩いて尋ねて教えを請い、いずれ答えを出すだろう。

故松下幸之助氏が、松下政経塾で塾生に向かって話した言葉だ。「もっと自分で考えないといかんわけやな」 自分の頭で考えるということを重視した氏の言葉は、実にシンプルなものだ。しかし、これを現在の大学教育において、学生に伝えるのは、とても難しい。( 『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下政経塾編 )

学生達は大学に、” 答えを求めて” やってくる。大学に入学した1年生に「君の将来の夢は?」と聞くと、約三割くらいは「夢をこれから大学で探します」と答える。しかし、このように答えた学生が卒業までに「夢を見つけました」と言ってくることはまれだ。たいがいは「答えを探し回る」というよりは「答えを待っている」という状態の学生が多いからだと思う。

中学校から高校まで、厳しい受験戦争に揉まれてきた。そのために「すべてのものにはひとつの答えがある」と教えられてきた。それは受験問題にはひとつの答えがあるだろう。彼らは常に、そのひとつの答えのみを教えてもらう事を待っている。大学生活でも、4年間のあいだひたすら待っている子が多い。授業中も、何かに疑問を呈するとか、何か新しい答えを生みだそうというような、気概はない。ただひたすら、正解を教えてもらうことを待っている。

だから、三年生の後半ともなり、自分の人生や就職について考え出すようになると、とたんにつまずいてしまう。人生の選択や、就職先の選択には「たったひとつの答え」なんて無いのだから。受験勉強のようにはいかないのだ。考えても答えのでないもの。実は、人生には、こうした「答えのでない」問題のほうが多いんだよ。

単純に仕事について考えるだけではない。本当に人生において大事なものとは何なのか? それは本当に沢山のひとに話を聞かなければわからないこと。数学の答えのように、一冊の本のある場所に書いてあったり、どこかのサイトに書いてあるといったものではないんだもの。クリックして出てくるのは、あやしげな名前占いくらいでしょう。重要なことは、ド・コ・ニ・モ ・書いてありませんよ。

就職の超氷河期と言われる現在。大学教育も曲がり角に来ていると思う。杓子定規に形式的な教育ばかり続けていては、学生達の成長はうながせない。「自分で歩き回り、答えを聞いて回る」ということを身につけさせなければならないのだ。松下幸之助氏は、冒頭の言葉につづけてこう言っている。

「じっとしておっても誰も教えてくれない。自分から聞き出しにいかないといかんな」



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