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5月 23, 2010の投稿を表示しています

清水次郎長

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自分のこともふくめてだが、都会ではすべての人間が「傍観者」になってしまいやすいのだろう。というよりも「当事者」になりにくいし「当事者」となることは大変なのだ。トラブルを見たからと言って、へたに口出しすれば、「うっせーなー」とか「うぜー」とか言われるのが関の山、場合によっては変な責任まで押しつけられてしまうのではないかと考える。だから、電車でウンチ座りする若者に、誰も何も言わないし、言えない。

江戸時代を舞台にした、落語や講談の世界では、なにかというと、ケンカやトラブルの仲裁にはいりたがるヒーローがいて、この世の問題を一気に解決してくれる。「清水次郎長(しみずのじろちょう)」や「幡随院長兵衛(ばんずいいん ちょうべえ)」といった、親分集だ。彼らはいわば私設の「知事」であり「警察署長」であり「簡易裁判所長」であり、とにかく地方自治において重要な役割をになっていたのだ。まさに「自治」という文字そのものを体現していた。どちらも、実在の人物です。
現代における「知事」や「警察署長」は分業だ。なぜかというと、こうした「権力」を一箇所に集中すると大変なことになる。「知事」が犯人を逮捕して判決をくだせるようになったら、一体何をしでかすことかわからないから。そうか。逆に言えば、江戸時代で何でもかんでも解決してくれた、ヒーロー的親分は、安心してすべてを任せられる、人格者であったということか。
上記の二人のような親分衆のことを「侠客」という。広辞苑によると「侠客」とは、「強きをくじき弱きを助けることをたてまえとする人。任侠の徒。江戸の町奴に起源。多くは、賭博、喧嘩渡世などを事とし、親分子分の関係で結ばれている。」とある。喧嘩渡世ってわかります? 喧嘩が仕事なんですよ。というよりも、喧嘩の仲裁。

上方落語には「どうらんの幸助」という希代のキャラクターがいる。いつも「どうらん(胴乱=お財布のこと)」をぶらさげているので「どうらんの幸助」とよばれる、まあ町の親分さん。やくざでもないのに、「幡随院長兵衛」を気取って、あちらこちらの喧嘩を仲裁して歩く。一代で起こした炭屋の隠居なので、潤沢な小遣いを使って、ダイナミックに仲裁していく。なんと、犬の喧嘩にまで割ってはいる。喧嘩をしている野良犬の気を散らそうと、生節まで買って与えるという「喧嘩の仲裁」マニアだ。

「喧嘩好き」ということは、実はすぐれた「調停…

傍観者の時代

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「傍観者」という言葉は、無責任で他人まかせな、現代人にぴったりだ。周囲の人間が、どんなに一生懸命やっていても、それをひややかに見ているだけ。「人には構わず」で「あっしにはかかわりのないこってござんす」というのが「傍観者」だ。電車や雑踏の中での、いざこざを見ても「見て見ぬふり」の乗客。けが人や急病人があっても、遠巻きに見るだけで助けもしない群衆。

ところで、このピーター・F・ドラッカーの名著「傍観者の時代」に登場する「傍観者」とは、実はドラッカー氏ご本人のこと。世界中から尊敬され、MBAの始祖とも言える氏について、「傍観者」だなんてとんでもない。この本で、ドラッカー氏が言う「傍観者」とは、わたしたちが考えるような「傍観者」とは全く違う。それどころか、まるで逆かもしれない。

この本には、ドラッカー氏が、長い人生の中で見た「人間の記録」である。ドラッカー氏ご本人のおばあちゃんに始まり、オーストリアの蔵相、元ナチス親衛隊副隊長まで、多種多様な人物の真実に迫る、観察の記録なのである。この観察とは、理科実験的な意味で言うような「観察」とは違う。ドラッカー氏の前に現れた人物になりきってしまうほど、超近距離からの観察であり、分析と考察なのである。そして、ナチスドイツによるオーストリア併合や、ユダヤ人への迫害、第二次世界大戦にいたる20世紀を、ひとりひとりの人間を通して見つめている。

客観的に人間を見つめること。つまり自分の「好き嫌い」や「先入観」を廃して、純粋に人間を見つめる。善人であろうと悪人であろうと人間である。自分自身の人生を全うしようとする存在であることは、一国の首相でも一市民でも変わらない。自分という存在を通して、自分のまわりの世界をベストに持って行こうとする点で、すべての人は同じという考えかた。ドラッカー氏の言う「傍観者」には、そういう意味があると思う。

現代のメディアを通して現れる「人間」はすべて、ある明確なワクに収まっていなければならないようだ。メディアは、そこに現れる人間を、その時々に応じて、あるカテゴリーに入れ込まずにはいられない。良い人間、悪い人間、それか、普通の人間。だけど、ドラッカー氏のいうような「傍観者」の視線は、すべての人間を「同じ人間」として見ている。そして、すべての人間は、すばらしく面白い。

スーパーおばあちゃんは永遠に >>>