心の分子
NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」で、10代目・柳屋 小三治 師匠を紹介していた。平成の名人の高座での孤高の姿をとらえた素晴らしい番組だった。
「やはり先生は、脳の弁護をしていますね」。
名人の域にまで達する人、特に小三治師匠のように、修行僧の荒行のような稽古を繰り返している人は、脳や記憶というものを越えた、ある状態を掴もうとまでしているのかもしれない。つまり、人間の体を、電線や歯車のような部品としてではなく、ひとつの統合された何かに持って行くということ。精神というものが高まることで、機械やコンピュータを動かすのとは根本的に違う何かの状態に持って行く、そういう状態。特に今の小三治師匠のように、リュウマチに冒されている体を酷使してまで、闘っている人にとって、その何かとは、我々のような凡人とは、まるで別次元のところにあるのだろう。