伯楽を待ちて後に至る
大谷池でしずかに花を準備する |
このハスの花は、大谷池(おおやち)という、草津の遊歩道の脇にある池に咲いていた。オフシーズンには誰も通らないような場所なのだ。夏になるまで誰にも気づかれずに、静かに開花のための準備をしていたのだろう。
騎は自ら千里に至る者ならず(きはみずからせんりにいたるものならず)
伯楽を待ちて後に至るなり(はくらくをまちてのちにいたるものなり)☆1
どんなにすぐれた駿馬でも、自分でひとりでに千里を走るようになるものではない。伯楽のような人物がそれを見いだすからこそ、そういうことができるのである。すばらしい才能というものは、それを発見してくれる人物がいなければ発揮できないのだ。
先日、NHK・Eテレの「ようこそ先輩 課外授業」で、お笑い芸人の鉄拳さんが出演していた。パラパラ漫画は、「ふだんは気づかないようなものごとのウラ側」を知ることに通じる。それを優しいまなざしで子どもたちに教える鉄拳さん。ほんといい番組でした。
鉄拳さんはいま、パラパラ漫画の作品で世界的に評価されるクリエイターとなった。でも、これまでの鉄拳さんのキャリアは挫折の連続であった。もう、お笑い芸人をあきらめようとした時に、やっとのことでその才能を見いだしてくれるプロデューサーに出会ったそうだ。
この話は一見、偶然のことのように言われている。しかし僕は、偶然ではなく必然のことなのだと信じたい。鉄拳さんは「いつか見いだされるために」ずっとそこにいたのだし、大変な修行時代をくぐり抜けたときにには「誰かに見いだされる」ことが約束されていたのだと。
しずかに努力を続けた人を見いだす。
それが伯楽の役目なのですから。
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☆1:説苑(ぜいえん) 尊賢篇より
説苑は前漢に編まれた説話集。
書名は、人を説得するための話をまとめたものの意。