良賈は深く蔵めて
いつもの通勤路を歩いていると、
あれ?こんな深紅のハイビスカスが咲いてる。
いつのまに?
ハイビスカスに限らず、花というものはすこしづつ蕾をつけておおきくなって、そしてさっと開くもの。そのプロセスでは、一番きれいな花は最後の最後まで、目立たないように隠している。だからこっちは、なかなか気づかない。
孔子という偉い人が、まだ若い頃。老子に会ってたずねたことがあるそうです。(歴史上は、本当は老子のほうが後世の人なんじゃないのとの説もあるようですが...まあ、言い伝えとして)「自分にはこれから何が必要ですか?」
老子はこう言ったそうです。
「まず、君はスタンドプレーが目立つし、欲も多すぎだね」
「ジェスチャーも派手。何にでも手を出したい淫気過ぎる」
とまあ、こういう徹底的な駄目だしを受けたということです。
老子はさらに追い打ちをかけ、かの有名な格言を孔子に伝えた。
「吾れ聞く、良賈(りょうこ)は深く蔵(おさ)めて虚しきがごとく」(☆1)
良き商人というものは、店構えはなどは貧しく見せておいて、本当の宝物のような商品は、その店の奥深くにしまっておくものだ。あなたのように、店先に見せびらかしているようではね、まあ、見込みはないね!
才能あふれる作家やデザイナーが、焦って早過ぎる成果の発表に走る。するとそれが世の中のひんしゅくを買ってしまうこともある。若い時には「良賈は深く蔵めて虚しきがごとく」あるほうがよい。自分の自慢したいようなものは、時が至まで隠しておいた方がよいのだ。
孔子は老子のこの教えを聞いて素直に深く反省をしたので、あのような大聖人になったのでしょう。
僕なんか結構いい年になってしまいましたが、良賈どころか、いまだにお店にならべる品物もなにもなくあたふたしているばかりの毎日です。
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☆1:
PHP文庫 現代活学講話集 十八史略 上巻
第二章 中国思想の源泉 「孔子の章」より